第18話「君への言葉」


―2011年1月16日日曜日とある時刻―

聖なる宮殿ゴッドパレス。

「復活した、か……」

アルディアはヴィザリオンの、勝の戦闘を見て安堵のような表情を浮かべた。
自分はそれを望んでいた。本来なら敵であるはずの存在なのに、どうしてもその事が嬉しくて仕方がない。

「慎くん……?」

「……いいんだ、これで。彼との決戦も、これでやっと出来るんだから」

しかし、粋の声を聞いてすぐに表情を戻すと、自分に言い聞かすようにそうつぶやいた。

「……慎くん、本当は、こんな事をしたくないんじゃないの……?」

「………………」

「慎くんも、本当は……」

「僕は、神の三天衆が一人、心の使徒アルディアだ……! 立ちふさがるなら、それを砕く……!」

その言葉にはどこか悲しみが混じっていると、粋は感じた。

「……慎くん……」


第18話「君への言葉」

「……慎くん」
「何?」
しばらくの沈黙の後、粋は意を決してアルディアに先程まで考えていた事を口にした。
「私を、神様の所に連れていって」
「……ライヴァス様の?」
あまりにも意外な言葉に、アルディアは一瞬その言葉を理解できなかった。
「その、ライヴァスさんと、お話がしたいの」
「しかし……」
それは、いくら粋の頼みでも聞く事が出来ない。ライヴァスは、もうすぐ全快するとはいえまだ療養中だ。それに、神の三天衆である自分やブレイグ、ゼイヴァはともかく、人間である粋にライヴァスが会ってくれるとは……
―アルディア。
「っ!? ライヴァス様!?」
その時、アルディアと粋がいる空間に、二人のものではない、低くて澄んだ声が聞こえてきた。ライヴァスの声だ。
―その者を、我のもとへと連れてくるのだ。
「し、しかし……」
―我が、それを許している。気にする事はない。
「わ、分かりました……」
主であるライヴァスの言葉に逆らう事は出来ない。アルディアは仕方なしといったように粋を連れて、ライヴァスのもとへと向かった。

ゴッドパレスの奥に存在する、ライヴァスが鎮座する場所。そこに、アルディアと粋はやって来た。
「………………」
粋は、ライヴァスの姿を見て、あいた口がふさがらなくなった。
目の前に巨大な人の形をした光が、椅子に座ってこちらを見つめていたのだ。これを当たり前と思っていない限りは、誰しもが同じ反応を取るだろう。
その光、ライヴァスがアルディアに視線を移して尋ねる。
「その人間か、我に会いたいと言ったのは?」
「その通りです」
「……少女よ、名は何と言う?」
再び粋に視線を向け、今度は粋に向かって尋ねた。
「え? あ……す、粋、です。星月粋……」
「……アルディア」
「は、はっ」
「しばらく、この粋という少女と二人で話がしたい。外してくれないか」
「……分かりました」
アルディアはライヴァスの言葉に従い、粋を残してこの場を去っていった。
粋はそんなアルディアを見送った後、改めてライヴァスを見つめた。
「………………」
「……我に何の用がある?」
ライヴァスは、端的に、かつ簡潔に尋ねた。
粋はその姿に威圧感を覚えるが、ここで怖気づいては何も出来なくなってしまうと思い、ゆっくりと口を開く。
「……どうして、このような事を続けるんですか?」
「………………」
「どうして、人を殺してしまうんですか?」
どうしてもそれが聞きたかった。
一方的に人類を悪と決めつけ、裁きと称して人々を殺していった。そんな身勝手な行為でも、何か理由があるはず。どんな理由でもいい。このまま理不尽に待つのは、嫌だ。
「……人類が、地球を、地球の自然を再生が困難な所まで荒廃させたからだ」
ライヴァスは粋の問いに、ゆっくりと答えた。
「困難とはいっても、無理ではないんですよね? だったら、なぜ人を殺す事ではなく、自然を再生する方法をとらなかったんですか?」
「………………」
「この戦いを、やめる事は出来ないんですか?」
「それは出来ない」
「なぜですか?」
「この戦いは、私と……アルディアのためだからだ」
「え……?」
ライヴァスのその言葉に粋は驚き、困惑した。
なぜ、全世界の人々を巻き込んだこの戦いが、ライヴァスとアルディアのためなのだろうか? それに、ライヴァスは戦いを仕掛けた本人だから自分のためというのはまだ考えられるが、なぜアルディアも含まれるのだろうか?
「………………」
そして、ライヴァスは沈黙した。それ以上、言葉をつむぐのを拒否するかのように。

―2011年1月16日日曜日午後9時27分―

VES司令室。
『……君のいる所の時間で1週間後の午前7時、海上区中央市街で決着をつけたい。その時刻に、一人で来る事。なお、この要求を受け入れなかった場合、人質の安全は保障しない』
「……これが、俺あてに入った通信ですか?」
モニターに映る文章を眺めながら、勝は日高に確認した。
「そうよ。これが、ついさっき入ってきたの」
「………………」
その文章には名前が明記されていなかったが、勝にとっては明らかだった。慎が、アルディアが決着をつけようとしているのだ。勝との因縁に。
「行くのかい、勝君?」
「当然です。これは、俺とあいつの問題ですから」
霧山の言葉に力強く答える勝。その眼には、まったく迷いがなかった。
勝には既に、二つの大きな決意が存在していた。粋を助け出す事と、この戦いを終わらせて平和な時を過ごす事。そのためにも、今ここで立ち止まったり迷ったりするわけにはいかない。
「そうか……だったら、とっておきを教えておくよ」
「とっておき?」
「そう。絶対勝利のための、鍵をね」
そういって、霧山はニコッと笑った。

―2011年1月16日日曜日午後11時43分―

「ふぅ……」
勝は、久しぶりに自分の家へと戻ってきてすぐに椅子に座り、一息ついた。
(久しぶりだな、本当に……スクールはしばらく休校状態だから、明日は掃除でもするか?)
部屋を見渡すと、所々にほこりがたまっているのが目に付く。よく考えたら、自分の今座っている椅子もほこりをかぶっていたかもしれない。そう思うと少し情けない気分にもなったが、今はどうでもよかった。
(それよりも……)
勝は考えた。
なぜ、慎は、アルディアは自分に戦線復帰をさせたのだろうか? このまま自分が復帰しなければ、彼らに有利に事を運べたかもしれない。なのに、アルディアはそれをせずに自分に発破をかけた。
それに、自分を戦線離脱させたのもアルディアだ。明らかに行動が矛盾している。
まだ疑問はある。粋を人質にとったというが、なぜそれを利用して事を進めていないのだろうか? 粋に限った事ではないが、人質をとればそれだけ相手の行動を制限させる事が出来る。にもかかわらず、慎はただ粋を捕らえただけで何もしようとしていない。
とにかく、アルディアの最近の行動には不可解な点が多い。
(……もしかしたら、アルディアは……)
もしかしたら、アルディアは自身に何かしてほしいのかもしれない。考えてみれば、いつからかアルディアに迷いや憂いの表情が垣間見えていた。
それは、アルディア自身を止めてほしいのか、この戦いを終わらせてほしいのか、それとも別の何かなのか、まったく分からない。
(いずれにしても、決着の時に、全てが分かるかもしれないな……)
決着の日まで、残り1週間。
粋の事はどうしようもなく気がかりではあるが、今はどうする事も出来ない。無事を祈りながら、勝はゆっくりと目を閉じた。

―2011年1月23日日曜日午前6時33分―

約束の時間の30分前。空が明るくなり始めているこの時刻に、勝は、ヴィザリオンは街の中に立っていた。目の前には、既にアルディアが融合した狼影の姿がある。
「……ここで、決着をつけよう」
「分かっている。ただ、一つ約束してほしい。俺が勝ったら、粋を解放すると」
「約束する。そのためにも、彼女をここに連れてきたのだから」
アルディアの言うとおり、粋は透明な球体のものに入れられた状態で、空中にたたずんでいた。
(勝くん……それに、慎くん……)
粋は、対峙している二人の姿を見ていても立ってもいられない気持ちに駆られていた。
久しぶりに、ヴィザリオンの姿とはいえ勝の姿を見られたのは嬉しい。しかし、かつては一緒にスクールに通っていた友達同士が、どうしてこうやって対立しているのだろうか。そう思うと胸が苦しくなって仕方がない。声を張り上げて二人を止めたいが、慎が何かをしたらしく、声を出す事が出来ない。
(なんで……どうして……)
まだ何もはじめていないにもかかわらず、涙がこみ上げてくる。
こんな事は止めてほしい。なのに、自分は何も出来ない。それがたまらなく辛かった。

「………………」
「………………」
二人は約束を交わすとすぐに沈黙し、互いに構えを取った。ヴィザリオンはフェニックスブレイドを、狼影は二振りの剣を手に取りながら。
「……行くぞぉっ!!」
掛け声と共に、ヴィザリオンが先制する。
「はぁっ!!」
「っ!」
だが、狼影は空中に飛び上がってそれをいとも簡単にかわす。
「五月雨……刃ぁっ!!」
そして連続してヴィザリオンに向かって無数の刃を放った。
「バァァニングッ、フェニィィィィックスッ!!」
すかさずヴィザリオンは、剣から一瞬吐き出された炎の鳳凰で刃をかき消す。
「このっ!」
「甘いよっ!」
狼影は落下しながらヴィザリオンに向かって、右手に持った剣を思い切り振り下ろす。
それをヴィザリオンは剣で受け止めようとするが、狼影はすかさず左手の剣でヴィザリオンの腕をはじき、そのまま右手を振り下ろした。
「があっ!?」
狼影の剣はそのままヴィザリオンを右肩から胸部にかけて大きな傷をつける。
「まだだ!」
剣を振り抜いた狼影は一度剣を戻し、右肩の狼の頭部を拳に装着してヴィザリオンに向けた。
「狼咆破っ!!」
狼の口からエネルギー弾がヴィザリオンに向かってまっすぐ放たれる。
「くっ! 負けるかぁっ!!」
体勢を立て直したヴィザリオンは眼前にまで迫ってきたエネルギー弾を剣ではじくと、その勢いを利用して剣を投げつけた。
「っ!?」
ヴィザリオンの思わぬ行動に一瞬驚くが、すぐさま剣を叩き落して反撃しようとする。だが、狼影の手は再び一瞬止まってしまう。
ヴィザリオンが、ザウラーナックルを装着して構えていたからだ。
「くらえ!」
「そうは……いかない!」
「ストラァァイクッ、ザウラアァァァァッ!!」
「牙・影・撃っ!!」
二人はほぼ同時に拳を打ち出した。
ヴィザリオンの拳と狼影の拳がぶつかり合い、辺りにエネルギーを飛散させる。
「ぐうぅぅぅっ!!」
「くっ……!」
互いの力は均衡を保っており、ほとんど動かない。
「だったら……!」
狼影はその状態を打破するために剣を抜いた。
「させるかぁっ!!」
だが、それとほぼ同時にヴィザリオンがもう片方の拳を構え、
「ストラァァイクッ、ザウラアァァァァッ!!」
「っ!?」
狼影に向かって再び打ち出した。
「くそっ!」
ヴィザリオンのまたしても予期できなかった行動に狼影は仕方なく拳を戻し、跳躍して二つの拳をかわした。
「逃がすか! トルネェェドッ、ユニコオォォォン!!」
続けてヴィザリオンは待機させていたユニコーンが変形した大砲を手に取り、空中でほぼ無防備な状態となってしまっている狼影に向かってエネルギー弾を放つ。
「っ!」
「なっ!?」
だが、エネルギー弾が狼影にヒットするかと思われた瞬間、狼影はその身をバラバラに分離させ、エネルギー弾から回避する。
バラバラになった狼影はそのままヴィザリオンの後方へと素早く回り込んで再び体を作り上げ、
「狼影! 流、星、だぁぁぁぁぁんん!!」
全身からエネルギーの雨をヴィザリオンに向かって降り注がせた。
「ぐあああああぁぁぁぁぁっ!!?」
ヴィザリオンは完全に虚を突かれてしまい、まともにそれを受けてしまう。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
狼影は肩で息をしながら、ゆっくりと倒れているヴィザリオンに近づく。
「ぐっ……!」
ヴィザリオンは何とかしようとするものの、ダメージが大きくまだ体を動かす事が出来ない。
その間にも狼影は近づいていき、目の前まで来ると手に持っていた剣をヴィザリオンの胸元に突きつけた。
「僕の、勝ちだ……!」
狼影はゆっくりと剣を振り上げる。
「やめて……!!」
粋は二人に届かないと分かっていながらも必死に叫ぶ。
「……!!」
ヴィザリオンもまた、敗北を覚悟した。
「………………」
だが、いつまで経っても狼影はその剣を振り下ろさない。
「……なぜ、止めを刺さない……?」
「くっ……!」
狼影は、アルディアは必死になって剣を振り下ろそうとする。しかし、自分の意思に反して、体が動いてくれない。
「……迷って、いるのか……?」
「迷ってなんか……!」
迷ってなんかいない。そう思っているはずなのに、その言葉さえも出てこない。
「くっ……そおぉぉぉぉぉっ!!」
そんな自分に腹立たしくなり、半ばやけくそに剣を振り下ろした。
「っ!!」
「はぁっ!!」
「なっ!?」
だが、既にヴィザリオンはどうにか動けるようになっており、自分の眼前に来た瞬間に狼影の腕を自分の拳で思い切り弾いて、剣を弾き飛ばした。
「俺はまだ、負けてはいない!」
ヴィザリオンはそういって立ち上がると同時に、左腕にアーチェリーバハムートが変形した弓を装着して狼影に向かって構える。
「シャイニングッ、バハムゥゥゥゥゥトォッ!!」
続けざまに弓からエネルギーの矢を放った。
「がはぁっ!?」
油断していた狼影は真正面からそれを受けてしまい、激しく吹き飛んでしまう。
「おおおぉぉぉぉぉっ!!」
「ぐっ……!」
しかし、それだけで終わらず、ヴィザリオンは再び構えて弓にエネルギーを収束させる。
「バハムートッ、プロミネエェェェェェンスゥッ!!!」
ヴィザリオンは弓から先程よりもさらにシャープなエネルギーの矢を狼影に向かって放った。
「二度目は、ない!」
しかし、狼影はダメージを受けていながらも追撃がある事を予測し、再び体をバラバラに分離させて回避する。そして、すぐさま再結合させると弾き飛ばされて地面に突き刺さっていた剣を手にとり、ヴィザリオンに向かって突進した。
「はああぁぁぁぁぁっ!!」
「負けてたまるかあぁぁぁぁぁっ!!」
ヴィザリオンもそれを迎撃するために弓を分離させ、再び剣を手に取った。
二人の剣がぶつかり合い、激しい音を響かせる。その直後、狼影は一度後退して構えなおした。
「行くぞ!!」
「来いっ!!」
お互いの掛け声と共に、狼影は自らの全身に、ヴィザリオンは剣にエネルギーをためる。
二人とも次の一撃に全力を注いで相手にぶつけるつもりなのだ。
「狼影! 流、星、だぁぁぁぁぁんん!!」
先に放ったのは、狼影だった。
狼影の全身からエネルギーの雨がヴィザリオンに向かって降り注ぐ。
「フェニックスッ、ディバイディイィィィィィッ!!」
しかし、数瞬の後にヴィザリオンが高熱によって紅蓮に光り輝く剣を思い切り振り上げて迎撃する。
狼影が放ったエネルギーの雨が、それによって全て爆音を上げながらかき消されてしまった。

「はぁ……はぁ……!」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
戦闘を開始してから十数分。二人とも、体力は既に限界に近づいていた。今、二人は気力のみでどうにか今の状態を維持している。
「……次が、最後だね……!」
「ああ、そうだな……!」
お互いに分かっていた。次の一撃で、この戦いに、そしてこれまで続いてきた対立関係に決着をつける事を。
(全ては、ライヴァス様の目的のために……!)
アルディアは、主としている神の目的を完遂させるために。
(また、みんなと一緒にいるために……!)
勝は、大切な人を、大切な人達の笑顔を守るために。
(俺は、全てを、これに……賭ける!!)
「ヴィクトリーウェポン、モードチェンジッ!! ディバインッ、フォオォォォォォムッ!!」
「!?」
最後の一撃のために、勝は、ヴィザリオンは霧山から聞かされた絶対勝利のための鍵を思い切り叫んだ。
すると、ブレイドフェニックスが、キャノンユニコーンが、ナックルザウラーが、アーチェリーバハムートが、ヴィザリオンを中心として一斉に集結した。
そして、四体のヴィクトリーウェポンは最終形態となるために、その身を変形させ始める。

最初に、ブレイドフェニックスとナックルザウラーがこれまでと同じ様に武器形態へと変形する。
次にキャノンユニコーンもその身を二分割し、後ろの部分はさらに左右に分割された。
同様に、アーチェリーバハムートがその身を分割し、頭部と翼と後ろ足と尾の四つの部分になった。
続けて翼の部分はその翼を左右に広げ、さらに翼を大きく展開させる。同時に後ろ足の部分は背部の装甲を残して左右にスライドして展開し、両足を収納して一つのパーツとなる。そして尾の部分は左右に分割し、二つに折れ曲がって一組のパーツとなる。

全てのヴィクトリーウェポンが幾つものパーツに変形を完了させると、ヴィザリオンが両腕を一度分離させた。
続いてヴィザリオンの胸部にアーチェリーバハムートの後ろ足のパーツが結合して胸部装甲となり、分離した時にザウラーナックルを装備した両腕も再結合する。
そこへキャノンユニコーンの後ろ部分のパーツが背部に結合し、ブースターとなった。
同時に両足にアーチェリーバハムートの尾のパーツが結合し、一回り大きな足となる。
そしてアーチェリーバハムートの頭部が変形したパーツが額と結合し、巨大な額飾りとなる。
最後に、ブレイドフェニックス、アーチェリーバハムート、キャノンユニコーンの残りのパーツが結合するとアーチェリーバハムートの翼がブレイドフェニックスの部分を包み込むように結合し、巨大な剣の柄となった。

全ての合体を終えた後、ヴィザリオンは剣の柄を手に取り、
「ディバインッ! ヴィッ!! ザリッ!! オォォォォォンン!!!」
狼影に向けて構えを取って巨大なエネルギーの刃を展開させた。
全てのヴィクトリーウェポンが合体し、一つとなった巨大な光の大太刀。それは、聖なる救世主という名の剣。己の意志を貫くための最強の力。
その名は、ディバインセイヴァー。
そして、そのディバインセイヴァーを手にしたヴィザリオンはディバインヴィザリオンとなり、この場に光臨した。
「それが、君の最後の姿、か……!」
「俺は、絶対に……勝つ!!」
「だったら、僕も最後の力、見せてあげるよ!」
そういうと狼影は空中に浮き上がって三度全身にエネルギーをチャージさせる。だが、先程までとは違い、そのエネルギーが体中からあふれて狼影の体を青白く発光させていた。
「これで……終わりだ!!」
やがて狼影は剣を持ってゆっくりと構えを取ると、
「狼影! 彗、星、だあぁぁぁぁぁんん!!!」
叫び声と共にヴィザリオンに向かって高速で体当たりを行った!
「おおおぉぉぉぉぉっ!!」
ヴィザリオンはほぼ同時に大太刀を振りかぶり、
「ディバインッ!! セイッ、ヴァアアアァァァァァッ!!!」
突進してくる狼影に向かって思い切り大太刀を振り上げた!
二人の最大の一撃がぶつかり合い、衝撃波や爆音を当たりにまき散らす。
「あああぁぁぁぁぁっ!!」
「おおおぉぉぉぉぉっ!!」
互いに一歩も譲らず、真正面から持てる力全てを引き出して押し合っている。
「僕は、僕は……!!」
ヴィザリオンの大太刀にひびが入る。
「負けない! 俺は、絶対に! 粋を助けるまで! みんなとまた学校に通うまで! みんなと一緒に笑いあえるまで!!」
だが、ヴィザリオンはそれでもまったくためらわずに押し続ける。

そして、その均衡が崩れた。
「っ!?」
狼影の剣が真っ二つに折れ、
「勝利へ……導けえぇぇぇぇぇっ!!」
「あああああぁぁぁぁぁっ!!?」
ヴィザリオンの大太刀が狼影の体に入り、今までにない衝撃を与えて思い切り吹き飛ばした。
「が……ぁ……っ……!!」
狼影は、後方にあった一つ目のビルを砕き、二つ目のビルを中破させて事切れる。
「俺の……勝利だ……!!」

―2011年1月23日日曜日午前7時8分―

決着がついてから、ヴィザリオンは大太刀を地面に置いて狼影にゆっくりと近づいた。
「………………」
「……君の、勝ちだ……約束どおり、彼女は解放するよ……」
狼影はその場からまったく動かずにそう告げると、粋を近くのビルに下ろして透明な球体を消し、完全に解放した。
「……慎、くん……」
「……慎」
ヴィザリオンは、狼影を見据えたまま慎の名を呼んだ。
「……僕は、負けたんだ……だから、もう……」
「そうは、いかない……お前も、放っておく事が出来ない……」
「どうして……? 僕は、君を、君達を……」
声が、涙声になる。
「そんなの、関係ない……前にも言ったが、俺とお前は……俺達は、もう友達だ……だから、また一緒に……」
そういって、ヴィザリオンは狼影に向かってすっと手を差し伸べた。
「くっ……うぅ……!」
アルディアは、慎はとうとうこらえきれず、涙を流した。これまでに自分や自分達のしてきた事に関係なく、ただ友として手を差し伸べてきた勝。その心に、慎は泣いて差し伸べられた手を握り返して応えた。

―2011年1月23日日曜日午前7時19分―

それから程なくして、勝はヴィザリオンから降りて粋と数ヶ月ぶりに向き合った。
「勝くん!」
「粋……!」
粋はたまらず、勝に駆け寄ってその体を思い切り抱きしめる。
「お帰り……お帰り、勝くん……!」
「ああ。ただいま、粋……」
勝はそれに応えるかのように、粋を抱きしめ返した。
「……誕生日、祝えなくてごめん……」
「ううん、いいよ……また、会えただけでも嬉しいから……」
互いに、しっかりと相手の体を抱きしめる。そこにいる証であるぬくもりを確かめ合うために。
「もう一度、会えるって……信じてた……」
「……ありがとう、粋……」
嬉しかった。こんなにも、自分を思ってくれている人がいる。こんなにも、近くにいるだけで嬉しい気持ちでいっぱいになる人がいる。そう思えただけでも、ここに帰ってきた事が幸せだと改めて分かった。
勝は、そのお返しといわんばかりに、ずっとずっと、粋を抱きしめていた。

―2011年1月23日日曜日午前9時11分―

VES司令室。
勝と粋の再会の後、慎は勝に「VESの人達に話をしたい」と言った。勝はそれを受け入れ、慎をここに連れてきた。
「……君が、話をしたいって言った明智慎君だね?」
「そうです」
霧山の質問にはっきりと答える慎。その体は先の戦いで満身創痍だったはずだが、その様子もあまりない。
「僕達にどんな話があるのかな?」
「……結論から話します」
しっかりと霧山を見据え、慎はゆっくりと話し始める。
「ここの時間で約一週間後、ライヴァス様……創生神ライヴァスが、傷を完治させて地球人類に対して最後の審判を下します」
慎のその言葉に、その場にいた全員が驚きを隠せなかった。
「それは、本当だね?」
「嘘は言いません。話す事全てが、真実です」
全ての始まりである、創生神ライヴァス。彼が復活するとなると、あの未曾有の恐怖が再び地球人類全てを襲う事になる。
「………………」
あの、ライヴァスがよみがえる。
かつて戦った事のある勝は、それを聞いて再び危機が迫っている事を恐怖として感じていた。
(だけど……それでも、止めなければならない……!)
止めなければ、またあの時のように罪もない人達が襲われてしまう。
それだけは絶対にあってはならない。だから、自分のこの手で止める。大切な人達が、また笑顔で暮らせるようにするために。
勝は、そう改めて誓いを自分の中に立てるのであった。

To be continued…


Next preview

もうすぐ、終わる……いや、終わらせるんだ……

私も、応援しているから。

……ありがとう。

……行こう。

勝利勇者ヴィザリオン 第19話「想いを伝えて」

俺達の想いは、きっと伝わる……!

初回公開日:2005年3月7日

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です