第6話「鬼神光臨の時」


―2010年8月14日土曜日午後5時7分―

―許さない。

―ああ、絶対許さない。

―例え全てをかき消そうとも、この怒りは止められない。

―地獄よりも深い、この悲しみは消えない。

―何よりも奴が憎い。

―私達の力を、全て一つのために。

―この悲しみと、

―憎しみと、

―怒りを、刃に込めて。

―心を鬼にしてでも…


第6話「鬼神光臨の時」

―2010年8月14日土曜日午後3時59分―

VESヒュージトレーニングルーム。
ここは、勇者達が訓練をするために造られた空間である。
訓練、といっても、身体を鍛えることはロボットなので不可能だ。では一体何をするのか。

ヒュージトレーニングルームで、オーガチームはある事を訓練していた。
「くそぉっ……! またダメか……」
オーガファイターが倒れたまま、悔しそうな表情を浮かべる。
他の二人も同じような表情だ。
「これで68回目の失敗だな……」
オーガスピーダーが失敗した回数を言うものだから、余計に嫌な気分になってしまう。
「仕方ありません。もう一度やりますよ」
そういいながら、オーガディフェンダーが立ち上がるが、オーガファイターは立ち上がろうとしない。
「そのセリフも何度目なんだ……?」
さすがに次が69回目となると、嫌気が差してきたのだろう。
「だいたい、何でこんな事する必要があるんだ? 別に今のままでも十分に強いだろ?」
そして、しまいには愚痴を言い始めてしまった。
こうなってしまうと、今日中に訓練を再開するのは難しい。
仕方なく、他の二人はあきらめようとしていた。
『確かに、オーガチームは今のままでも強いかもしれない』
そこに、天井の隅にあるスピーカーから峯島の声が聞こえてきた。
『だが、オーガチームは合体した時、その真の力を発揮できる』
峯島が、オーガファイターに向かって、説得するように言う。
オーガチームの訓練、それは、合体のための訓練だった。
オーガチームは、設計上合体が可能なのだ。三体の力が結集され、さらにはそれ以上の力を発揮できる。
理論上ではヴィザリオンをも上回る力を発揮できる。
だから、峯島は合体を成功させたいと思っているのだ。
「そりゃそうかもしれないけどよ……」
「『合体できない合体なんて、ないも同然』と言いたいのだろう?」
「ぐ……」
自分のセリフを取られて、何も言えなくなるオーガファイター。
「確かに、そうかもしれません。しかし……」
「?」
「しかし、人々を守るための新たな力が手に入るのならば、例え可能性が限りなく0に近くても、私はあきらめません」
「………………」
オーガディフェンダーの言葉に、オーガファイターは心を動かされた気がした。
「ちっ、そこまでいうんだったら、付き合ってやるよ」
仕方なくといった感じでオーガファイターは立ち上がり、軽く腕を動かして身体を慣らす。
だが、その表情はどこかまんざらでもなさそうだった。
「素直じゃないな」
「ほら、ぼさっとしてないで、さっさと70回目を始めるぜ」
「69回目だ」
オーガスピーダーが訂正する。
「回数なんかいいんだよ。ようは結果だ」
「そうですね」
オーガディフェンダーは微笑み、再び練習を再開するために構えを取った。
「それでは、行きます!」
「おう!」
「了解!」
そして、オーガチームは再び合体の練習を始めた。

「……合体できない理由など、私はとうに分かっているというのにな……」
峯島はその光景を、どこか悲しげな表情で見ていた。
「やはり、私は卑怯者だな……現実を受け止めようともせず、無駄ともいえる行為をさせてるのだから……」
彼の独り言にどんな意味が込められていたのか、それは彼自身しか分からない事であった…

―8月14日土曜日午後4時18分―

街では、静かにゼイヴァの作戦が始まっていた。
「………………」
電気が消え、暗く静まり返っている空間。そこは、とあるデパートの売り場だった所だ。
その中で、人々が固まって何かにおびえるようにじっと見据えていた。
「い、一体何をするつもりだ……?」
その人々の中にいる一人の男が、その男に向かって思い切って質問を投げかける。
「愚問だな」
男が質問を投げかけたその男、ゼイヴァは無関心そうに答えを返した。
「くっ……!」
男は怒りを覚えるが、先程ゼイヴァがたった一人でこのデパートを一瞬のうちに制圧したのをこの目で見たものだから、何かを言い返そうと思っても口が動いてくれない。

「………………」
人々の中に、小さな存在。
「ねえ、きっと助けが来てくれるよね……?」
少年、仙太は、自分の母親に向かって聞いてみた。
こんな時、いつもなら絶対にVESの勇者が来てくれる、オーガチームが駆けつけてくれる。仙太はそう信じているのだ。
「大丈夫、きっと来てくれるわ……」
母親は仙太を安心させるために、笑顔でそう答えた。
「うん……」
仙太は来てくれる事を信じ、うなずく。

―8月14日土曜日午後4時25分―

デパートが一人の男―ゼイヴァのことである―に制圧されたと聞き、勇者達は街に降り立った。
ヴィザーはすでにヴィザリオンに、神威は白虎神に合体を終えている。
「様子がおかしいな……」
「確かに、いつもなら私達が来たらすぐに攻撃するはずですが……」
そして、勇者達は目の前にいる神機グレイに対して警戒心を抱いていた。
グレイはデパートの前に立ち、ただじっと動かないで勇者達をにらむように見ている。
特に攻撃をするわけでもなく、だ。
「何でもいいじゃねえか。とにかく、あいつを倒してデパートの中にいる人たちを助けりゃいいんだろ?」
「単純に言うな。罠かもしれないぞ」
オーガファイターが武器を手にして突っ込もうとするのを、オーガスピーダーが制した。
「けどよ、そんな事言ってたら何も出来ないぜ」
「何の策もなく攻撃を仕掛けるのも、利になるとは思えませんが」
「オーガディフェンダーの言うとおりだ。ここは様子を見て……」
その時、勇者達は自分達に向かって強大なエネルギーが飛んできたのを感じ、慌ててその場から離れる。
見ると、グレイが両腕をキャノン砲に変形させていた。おそらく、先程のエネルギー砲撃はグレイによるものだろう。
「やっと攻撃してきたか。反応が遅いんだよ!」
「こうなったら、完全に反撃、だな」
「仕方ない。みんな、行くぞ!」
『了解!!』
全員が声をあわせてヴィザリオンの掛け声に返事をした。

「ウイング、スラァァッシュ!!」
ヴィザリオンは右腕の翼によって形成されたエネルギーの刃で、グレイに向かって攻撃する。
ガキィッ!
しかし、グレイが両腕でそれを防いだ。
前回同様、グレイもまた並大抵の攻撃は通用しないのであろう。
「くっ……!」
ヴィザリオンは仕方ないといった感じで、素早く後ろに引いた。
「どうしたんですか、ヴィザリオン?」
その様子に気づいた白虎神が声をかけてくる。
「奴も装甲が固い。前の奴はヴィクトリーフィニッシュが通じなかったほどだ」
「ヴィクトリーフィニッシュが……!?」
「だけど、フェニックスブレイドなら!」
ヴィザリオンは構えを取り、
「フェニックス、ブレェェェイドッ!!」
腕を空に突き出した。

しばらくして、ブレイドフェニックスがヴィザリオンの元にたどり着くと、
「モードチェンジッ!」
ヴィザリオンの二つ目の掛け声によりその姿を変形させる。
首が縮んで頭部が胴体と結合したあと、両方の翼が前に来て、刃となる。
両足がたたまれ、横に広がって鍔となり、尾は持ち手となる。
変形が完了すると、ヴィザリオンは完成された剣を手にし、
「ブレイドッ! ヴィッ!! ザリッ!! オォォォォォンン!!!」
グレイに向かってフェニックスブレイドを構えた。

「行くぞっ!」
ヴィザリオンがフェニックスブレイドをグレイに向かって振り下ろす。
グレイは先程と同様に両腕を構えて防いだ。
「おおぉぉぉっ!!」
しかし、フェニックスブレイドが瞬間的に高熱を発し、グレイの腕を切り落とす。
その衝撃により、グレイはデパートのある後ろによろめいたが、
「はぁっ!」
白虎神の後ろからの攻撃で前のめりに倒されてしまった。

―8月14日土曜日午後4時39分―

デパートは、外で起こっている戦闘によってわずかではあるが揺れていた。
「な、何が起こってるんだ……?」
その揺れに対し、人々は恐怖を覚える。
「きっと……きっと、助けが来てくれたんだ!」
だが、仙太だけ他とは違い、希望の表情をしていた。
自分がずっと信じていたから、あきらめずに思っていたから、来てくれたのだと思っているのだ。
「………………」
ゼイヴァも勇者達が来ていることは分かっていた。いや、あらかじめ分かっていたのだ。
自分が何か騒動を起こせば、神機を出せば、勇者達は必ず来る。ゼイヴァはあえてそうしたのだ。
その理由は、これから行なう作戦にある。
「……え?」
ゼイヴァは突然、仙太の前に立ったかと思うと、
「貴様、来い」
「あっ!?」
仙太を引っ張り上げてどこかへと連れて行こうとする。
「仙太!」
「お母さん!」
仙太の母親が立ち上がり、仙太を引き戻そうとしたが、
「!?」
突然、足元に火花が散り、母親はその場に立ちすくんでしまった。
「邪魔はするな」
ゼイヴァが魔法のようなものを使い、火花を作り出したのだ。
「お母さぁん!」
「仙太ぁ!」
二人が手を伸ばしあうものの、それは決して届かなかった。
そして、それが悲劇の序幕だった…

―8月14日土曜日午後4時43分―

勇者達の猛攻は続いていた。
「ファイティングドリルッ!!」
オーガファイターがドリルをグレイに向け、攻撃する。
「スピードッ、シューートォ!!」
オーガスピーダーが追い討ちをかける。
「!!」
その合間にグレイは再生した腕出を再びキャノン方に変形させ、反撃を仕掛けるが、
「はっ!」
オーガディフェンダーが前に出て防御されてしまった。
「おぉぉぉっ!!」
反撃がやんだ瞬間、ヴィザリオンがオーガディフェンダーの前に出て、
「バァァニングッ、フェニィィィィックスッ!!」
グレイに向かって剣を思い切り振り下ろした。
すると、一瞬ではあるが剣から炎が噴き出し、それが鳳凰を形作る。
鳳凰はグレイを飲み込み、そのままグレイを吹き飛ばした。
「よし、行くぞ!」
ヴィザリオンが、グレイが立ち上がる前に止めを刺そうとした、
「待て」
「!?」
まさにその時だ。
「動いたらこの人間の命はないぞ」
突然、ゼイヴァが仙太を腕で掴みながらデパートの屋上に現れたのだ。
「ゼイヴァ!」
「仙太!?」
「み、みんな……」
仙太は今にも泣き出しそうな表情でオーガチームを見つめる。
「くっ……卑怯な事を……!」
「何とでも言え。我らは時間を無駄に出来ないのでな」
ゼイヴァがヴィザリオンたちを見下しながら言う。
「その子を放すんだ!」
「放してほしいのなら、武器を捨てろ。そして一切の行動はするな」
「くっ……」
武器を捨てる。つまり、この戦闘を破棄しろという事だ。そして、同時に敗北を認めろという事になる。
ヴィザリオンにとって、神威にとって、オーガチームにとって、勇者にとってそれは屈辱にも等しい行為だ。
さらに言えば、それは人々にとっても全てを投げ出してしまう事になる。
それだけは避けたい。だが、全人類の為に一人の命を犠牲にするのも避けたい。

勇者達は一斉に武器を投げ出した。
結局、一人の命を救う事を選んだのだ。
だが、それだけで終わらせるつもりもなかった。何かチャンスがあれば、そこで形勢を逆転させる意思は捨てなかった。
「フン……」
そんな勇者達を鼻で笑ったかと思うと、
「神機グレイ、奴らを痛めつけろ!」
ゼイヴァはグレイに指示を下した。
グレイはその指示を受け、自分が成すべき事を開始する。


―8月14日土曜日午後4時51分―

「ぐあぁぁぁっ!!」
勇者達はグレイの放ったエネルギーによってダメージを与えられ、後方に吹き飛んでしまう。
「ぐっ……!」
それでも立ち上がり、再びグレイに向かって立った。
こうすればまた自分は傷つくと分かっていながら。
(チャンスを……チャンスを待つんだ……)
しかし、例え傷つけられても、決して勇者達の精神は折れていなかった。いつ来るかも分からない、けど決して捨てたりしない希望を望んで。
「安心しろ、死ぬのは一瞬だ。それとも、貴様らはじっくりと死への階段を歩きたい方か?」
あまりにもぞっとするようなゼイヴァの一言。
実際、間近で聞いていた仙太は顔が蒼白していた。
「やれるモンなら、やってみやがれ……!」
「例え、この身が消えようとも……俺達の心は、死なない……!」
「決して、屈したりは、しません……!」
だけど、彼らはその言葉にも全く動じることなく、しっかりとした意志を持ってグレイを見つめた。
「みんな……」
そのオーガチームの姿に、仙太は先程の恐怖も消え、潤んだ目でオーガチームを見つめる。
「くだらん、実にくだらんな……」
だが、そんなオーガチームにも「くだらない」の一言で吐き捨て、ゼイヴァは新たな指示を下す。
すると、グレイは攻撃目標をオーガチームに向けた。
キャノン砲をオーガチームに向かって構えたのだ。
「ぐっ……!」
オーガチームは全員防御の体勢を取るが、傷ついた身体では正直何処まで持つか分からない。
「!!」
あまりゆっくりと考える暇もなく、グレイはオーガチームに向かってキャノン方からエネルギーを放った。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」
だが、その直前、オーガチームの前に何かが立ちはだかった。
「ヴィザリオン!」
そう、ヴィザリオンだ。
「ぐ……ぅぅぅ……!」
何とかグレイの攻撃に耐えるものの、その声は心なしか弱くなり始めている。
さらには、その衝撃によってマスクが壊され、顔がむき出しになっていた。
「がはっ!」
攻撃がやんだ瞬間に、ヴィザリオンが片ひざをついてしまう。
「な、何故……?」
「お前達より……俺の方が、持ちこたえられるからな……」
ヴィザリオンはそういいながら、無理に作った笑顔を見せた。
マスクがなくて表情がはっきりと分かるだけに、それが痛々しく見える。
「ヴィザリオン……」
仙太も、その姿を辛そうな目で見ていた。
「茶番はそこまでにしてもらいたい」
だが、ゼイヴァの言葉で現実に引き戻される勇者達。
見ると、グレイが再びこちらに向かってキャノン砲を構えていた。
「!」
すると、今度は白虎神が前に出て仁王立ちする。
「私も……勇者です……!」
「白虎神……」
「そんなに散り際は華々しくしてほしいのか? ならば、その望みを叶えてやろう!」
ゼイヴァがそういってグレイに指示を出そうとした瞬間、
「っ!」
ガッ!
「ぐぅっ!?」
突然、仙太がゼイヴァの腕を噛んでゼイヴァの腕から逃れた。
「お、お前なんかに、みんなが負けるものか!」
震えた声で、ゼイヴァに言葉をぶつける仙太。
そんな仙太に、ゼイヴァは怒りを覚え、
「この……小僧が!!」
仙太に向かって手のひらをかざした。
「!!」
「ゼイヴァ……!」
「やめろおぉぉ!!」
それに気づいたオーガチームが、慌ててゼイヴァと仙太のいるデパートに駆け寄る。
途中、グレイが立ちはだかったものの、簡単に跳ね除けて走った。
これから起こるかもしれない、最悪のシナリオを書き換えるために、走った。
必死に手を伸ばす、声を上げる、静止させようとする。
だけど…

ズガァ………ッ!!

「………ぁ……っ……!」

光が、閃いたと思った瞬間に、仙太の右胸を貫いた。

「…………!!」

時が、ゆっくりと流れているようだった。まるで、ビデオのスロー再生を見ているようだった。

仙太の体が、後ろに倒れていく。

それを止めたかった。

でも、届かなかった。

仙太の小さな体が、周りの地面が、自らの血によって赤く染まっていく。

だんだんと、仙太から生気がなくなっていくのが、目に見えた。体が、痙攣していた。その度に血がふき出していた。

見たくなかった、悲劇のシナリオ。演じたくなかった、キャスト。演じてほしくなかった、主人公。

ゼイヴァを除く全員が、その光景に大きく目を見開いていた。

「……仙太ぁーーーー!!」
やっと声が出た。
しかし、その時はすでに手遅れだった。
仙太は、もう声も出さない。笑ったり、泣いたりもしない。
命を、失ってしまったから。
「何故……何故、こんな事に……」
「出来る事なら、私が代わりたい……」
「おい、目をあけろよぉ……もう一度、俺の名前を呼んでくれよぉ……」
ロボットだから、涙は出ることもない。嗚咽も出ない。だけど、心があるから、悲しんでいる。心の底から、大切な存在を失った事に。
「たかが人間一人が死んだぐらいで、何を……」
そこに、ゼイヴァがまるで虫が死んだように言い捨てた。
それがオーガチームの心に、炎をつけた。
「たかが、だと……!?」
「お前にとってはそうかもしれないが……」
「私達にとっては、かけがえのない、大切な人です!!」
オーガチームは怒りの眼差しでゼイヴァを見据えた。
「っ!」
その瞳に、思わずゼイヴァは思わず身じろぎする。

―8月14日土曜日午後5時6分―

VES司令室。
「オーガチーム……!」
オーガチームが怒りに震えている姿を、峯島は険しい表情で見ていた。
「っ!? 長官!」
その時、突然日高が驚いたような表情で長官を呼んだ。
「何だ?」
「オーガチームの、合体プロテクトが……決して解けることのなかった、プロテクトが……」
「解けたのだろう?」
日高が次に言うはずであった言葉を、峯島がさえぎって口にする。
それに、峯島と霧山を除く、VES隊員が驚いた。
「合体が可能となる……」
「そして、鬼神が光臨する……」
峯島の言葉に続き、霧山は謎の言葉を口にする。
この時点で、その意味が分かっていたのは、峯島と霧山の二人だけであった。

―8月14日土曜日午後5時7分―

「お前だけは、絶対に許さない……」
「例え、心を鬼にしてでも……」
「絶対に、」
『倒す!!』
三人の言葉が重なった瞬間、三人の中で何かが解き放たれた。
それは、本来解いてはならなかった封印。だけど、解きたかった力。
三人の中にキーワードが浮かぶ。
同時に、三人は声をそろえてキーワードを思い切り叫んだ。
「フォオォォォォムッ、アァァァァァップッ!!」

三人は一斉に飛び上がり、その姿を変形させていく。
まず、オーガディフェンダーが一度ビークル形態へと戻り、機体の中央が折れ曲がってブロックを形成した。
オーガファイターもまたビークル形態に戻ると、ドリルのあるブロックを分離させる。
次に、機体を左右に分割し、上下に伸ばして下部が横に回転して腕を形成した。
オーガスピーダーも先の二体と同様にビークル形態へ戻り、左右から中央に折れ曲がる。
機体から爪のようなつま先が現れ、機種は後ろに折りたたまれて脚部を形成した。
三体が集結し、その機体を互いに結合させる。
ブロックとなったオーガディフェンダーの左右に腕が、下部には脚部がつながり、肘の部分にドリルが結合すると同時に腕から拳が出現した。
最後に顔が出現し、その眼に光が灯る。
鬼神は、一通りの過程を終えると、
「鬼神合体!!」
拳をゆっくりと握りしめ、
「オォォォガッ!! ガァァァァァァァディアァンン!!!」
獣のような眼で憎むべき敵をにらんだ。

それは、本来ならば決して降臨することのなかった鬼神。それは、怒りと憎しみと悲しみが呼び起こした、嘆きの姿。
その名は、オーガガーディアン。
各部から発する、放熱の蒸気が辺りの景色をゆがませ、まるで鬼が発する妖気を思わせる。
今ここに、鬼神が光臨した。

「………………」
全員はその姿に、沈黙していた。
あまりにも迫力のありすぎるオーガガーディアン。何も寄せつけないほどにその殺気が恐ろしいのだ。
「……が、合体など、この私の神機にとっては関係のない事だ」
「果たしてそうか……?」
「っ!?」
突然、オーガガーディアンが口を開いた。
その重々しい声に、ゼイヴァは思わず身体を震わせる。
「い、行け、グレイよ!」
それでも、ゼイヴァはグレイに攻撃命令を出した。
グレイは黙って指示を聞き、キャノン砲をオーガガーディアンに向ける。
「オーガガーディアン!」
ヴィザリオンと白虎神は手助けしようとしたが、
「手出しは無用、そこで待っているんだ……」
オーガガーディアンはそれを断り、ゆっくりと手を剣に添えた。
「鬼門、開放……!!」
そして、ゆっくりと剣を抜き、グレイに向かって構える。
次の瞬間、グレイはオーガガーディアンに向かってエネルギーを放った。
先程まではこれに苦しめられていたが、オーガガーディアンは落ち着き払って自分に向かってくるエネルギーを見つめ、
「はあぁぁっ!!」
辺り全体を震わせるほどの大きな声を上げた。
すると、エネルギーがオーガガーディアンの前ではじけ、消滅する。
「………………」
その一瞬の光景に、全員は開いた口がふさがらないでいた。
「い、一体何が……?」
「おそらく、エネルギーを大声による空気の振動で拡散させたんだ……」
「そんな事が……」
「オーガガーディアンだから、出来たのかもしれないな……」
味方であるヴィザリオンや白虎神をも驚かせる、その力。ヴィザリオンは、その強さにわが身が震えている気がした。
「貴様が犯した罪、地の底よりも深い地獄に値する……!」
オーガガーディアンはそういいながら剣を持っている手に力を込め、
「第六層、焦熱地獄っ!!」
グレイに一瞬で近づいて両腕に向かって剣を思い切り振り下ろした。
グレイの両腕は、千切れたように痛々しく切り落とされる。
そして、それがあまりにも強すぎる衝撃だったのか、グレイはそれと同時に倒れてしまった。
何とか立ち上がって反撃の体勢を取ろうとしたグレイの目の前に、オーガガーディアンは音も立てずに立ちはだかり、
「この世から……消えろ!!」
改めて構えを取ると、
「最終層……無間、地獄っ!!!」
グレイの身を消し去るほどの勢いで、何百何千にも切り裂いた!!
その身体は、爆発することもなくその場に塊として残った。
オーガガーディアンがゆっくりと剣を鞘に収め、
「地獄に落ちて、罪を償うがいい……!!」
足元のグレイに対して、憎らしげに言葉を吐く。
それと同時に、オーガガーディアンは涙を流した。
正確には、それは涙ではない。体中の熱を冷やすための冷却水が単に眼の部分から漏れただけなのだ。
しかし、それは今のオーガガーディアンを表しているようであった。
悲しみの、鬼を…

「………………」
「………………」
グレイに抵抗させる暇も与えず、あまりにもあっけなく終わったこの戦い。
全員はすでに言葉を失っていた。
「ゼイヴァ……!」
「っ!?」
そこに、オーがガーディアンが口を開き、ゼイヴァの方をにらむ。
「くっ……!」
ゼイヴァはそのにらみに恐怖にも似た感情を覚え、逃げるように退散した。

―8月18日水曜日午前10時21分―

その日、大達仙太の葬儀が行なわれた。
「………………」
仙太の親戚達に混じって、勝がその葬儀に参加していた。来ることの出来ないオーガチームの代わりに。
(……本当に、ごめん……俺が、俺達がもっと頼りになる存在だったら……!)
勝は自分を責めたてていた。
あの時、あの場にいながら自分は何もすることが出来なかった。まだ未来のある子供を見殺しにしてしまった。
自分に対して悔しい、憎い…
―気にしないで。
「っ!?」
その時、仙太の声が聞こえたような気がした。
辺りを見回すが、特に変わった事はない。
―僕の事、気にしなくていいよ。
だが、仙太の声は再び聞こえてきた。今度は聞き間違いとかではない。
(……本当に、いいのか?)
その事を自覚した勝は、仙太に向かって質問を返してみた。
―だって、戦えなくなると思うから……オーガチームのみんなに、前に進んでほしいから…
答えが返る。その時点で、すでに勝は確信を抱いていた。
(そうか……)
―僕は幸せだったから、だから、オーガチームに伝えて…
最後に、仙太は勝にこう言葉を伝えた。全ての、思いを込めて…

―ありがとう。

To be continued…


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約束、だよ…

粋は、菜摘に言われて勝に休みの日に一緒に出かける事を提案した。
勝は快く返事をしてくれ、粋は嬉々としてその日を待つ。
しかし、約束の日の前日深夜、勝に突然の出撃命令が下される。
戦闘に出向く勝。思ったよりも苦戦を強いられる勇者達。
その時の運命は、勇者達には傾いていなかった…

勝利勇者ヴィザリオン 第7話「約束」

ずっと、ずっと、待っているから…

初回公開日:2002年9月23日

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