第5話「鳳凰の剣」


―2010年8月2日月曜日午前3時1分―

まだ日も昇らない時間のVES開発室。
メカニックでもある霧山は一人コンピュータに向かっていた。

「最終調整は済んだのか、霧山副官?」

そこに、峯島が開発室に入ってきた。

「ええ、あともう少しです。ここの誤差の修正が終われば」

峯島の質問に、笑顔で答える霧山。

「そうか」

「何せコレはヴィザリオンの新たな要となるかもしれないんですから。念入りにチェックをしないと」

「そうだな……」

峯島が霧山が向かっているコンピュータのモニターに目をやる。
モニターに映っているのは、鳥の姿をしたメカが映っている。

「……でも、」

「?」

「本当は、こういったものを使わない方が一番いいんですけどね。交渉とかで終わらせられればいいんですが……」

「……これは、仕方のない事なんだ……向こうの正義が変わらない限り……」

峯島は天井を見上げ、目を細めた。


第5話「鳳凰の剣」

―8月2日とある時刻―

聖なる宮殿ゴッドパレス。
「病院、か……」
ゼイヴァは目の前に映像を映しながら、独り言を口にした。
そして、その独り言から察するに、ゼイヴァが次に狙うのは病院であろう。
「いくら作戦とはいえ、若干ためらってしまうな……」
そういいながら、わずかに表情を変える。
さすがのゼイヴァといえども、怪我人や病人の集まる病院を狙うのは戸惑いがあるのだろうか。
「だったら、別の場所を狙えばいいじゃないか」
思案しているゼイヴァの所に、突然アルディアが現れた。
「そうもいかない。人間を抹殺するのが我々の使命。だったら、もっとも手早い方がいいであろう」
「なら、何でためらう必要があるんだい?」
アルディアのその言葉に、ゼイヴァは答えなかった。いや、もしかしたら答えられなかったのかもしれない。
ともかく、ゼイヴァは無言であった。
「……仕方ない。これも全てはライヴァス様の意思。我らはそれを成し遂げるのみだ」
そして、ゼイヴァは意を決して作戦を始めるためにその場から去っていった。

―2010年8月2日月曜日午後2時2分―

ここは、海上区御鈴川(みすずかわ)総合病院。
勝達はそこに入院しているクラスメートの見舞いに来ていた。
「思ったより元気そうだったな」
そして、見舞いも終わり、今は自動販売機でジュースを買って飲んでいるところだ。
「ね、私の言った通りでしょ。もともと入院の理由が『階段から転げ落ちて足の骨にヒビが入った』だもの」
菜摘が得意げに言う。
「まあ、菜摘は能天気だからね。あまり心配とかしないタイプ……」
「心配ぐらいはするわよ、瀕死の重症だったら。ね、粋?」
「う~ん……」
何て答えればいいのか分からず、変な唸りを上げながら自販機にお金を入れようとする粋。
「あっ」
チャリン
その時、隣の自販機で小さく驚いたような声と金属音が聞こえた。
振り向くと、腹部が大きくなっている女性―妊婦であろう―が自販機の下に手を伸ばそうと懸命になっている姿が眼に入る。どうやら、お金を落としてしまったらしい。
しかし、その体形のせいでうまく手を入れる事が出来ず、困っている。
「………………」
「あっ……」
そこに、灯矢が自販機の下に手を伸ばし、お金を手に取った。
「はい、どうぞ」
優しく微笑み、女性にお金を差し出す灯矢。
「あ、ありがとうございます」
女性はお辞儀をして、灯矢からお金を受け取る。
「あまり無理はしない方がいいですよ」
「はい、すみません」
もう一度お辞儀をするとお金を自販機に入れてボタンを押し、ジュースを手にした。
灯矢はその姿を目にした後、勝達のもとへ踵を返した。
「やっぱり灯矢さんは優しいですね」
「そんな事ないよ。もしかしたら偽善かもしれないしね」
「何言ってるんだ、下心なんて持ってないくせに」
全員が笑う。
「……………………」
その一方で、何故か女性は缶ジュースを手に持ったまま何もしようとしない。
「……………あっ」
そしてしばらく経った時、急に何かを思い出したかのように声を上げると灯矢の元へと近づいてきた。
「?」
その姿を灯矢は不思議そうに見ていたが、
「はい、どうぞ」
女性はそんな事も気にせずに缶ジュースを灯矢に差し出した。
「えっ?」
突然の事に驚きの声を上げる灯矢。
「よく考えたら、ジュースは止められていました、私」
あまりにものんきに言うものだから、その場にいた灯矢を含む五人は一瞬時が止まったかのように固まってしまう。
「だから、さっきお金を拾ってくれたお礼です」
「あ、ありがとうございます……」
灯矢は苦笑しながらも、缶ジュースを受け取った。
「そちらは、お友達ですか?」
女性が勝達の方に目を向ける。
「はい、そうです」
「はじめまして、秋原 直(あきはら なお)って言います」
秋原と名乗った女性は、勝達に向かって丁寧に自己紹介をし、勝達はそれにつられて礼を返した。
「秋原さん、て言うんですか」
「あれ、言いませんでしたっけ?」
言ってなかったって、と灯矢は思ったが、口には出さなかった。
「もうすぐ生まれるんですか?」
そんな雰囲気を変えようと思ったのか、粋が話を切り出し始める。
「はい。予定では来月なんです」
「元気な子供が生まれるといいですね」
「ありがとうございます」
秋原は微笑んだ。だが、すぐにその笑顔は消え、陰のある表情となる。
「? どうしたんですか?」
「いえ、私、体が少し弱いんですよ。だから今も入院しているんです……」
そう言われれば、妊婦は普通入院はしない。何かがあった場合以外は。
つまり、彼女は何かがあったのだ。それが、彼女の言う「体が弱い」なのだろう。
「…………………」
全員の間に沈黙が流れる。
「……でも、」
それを打破したのは、誰でもない秋原だった。
「大丈夫です。きっとなんとかなりますよ」
「そ、そうですよね。なんとかなりますよね!」
菜摘は、秋原の能天気さにちょっと苦笑しながらも、元気づけるために笑顔を作る。
「まあ、アニメでもこういった場合は必ず大丈夫だからね」
「賢も、たまにはいい事言うじゃない」
「でも、こう言った日常風景の後は、大抵襲撃されるんだけど」
『…………………』
賢の一言で再び流れる沈黙。先程とは違い、重い沈黙ではなく寒い沈黙だが。
「………ゴメン……」
賢はその雰囲気がまずいと悟ったのか、小さな声で謝った。
「け、賢、あんたねぇ……」
菜摘があきれて何か一言でも言ってやろうとしたその瞬間であった。
「っ!?」
遠方の方で聞こえてきた轟音、そして揺れる病院。
「ほ、本当に来たみたいだね……」
すでに引きつった顔になっている賢。
「嘘から出たまことって、こういう事を言うんですね」
そして、秋原は先程と同様にボケている。
「ふ、二人ともそんなのんきな事言ってないで、さっさと逃げるわよ!」
菜摘の言うとおりだ。
襲撃されたとなると、助かるためにも逃げなければならない。
「いや、ここから逃げなくても大丈夫だ」
だが、その時勝は落ち着いた様子でその場にとどまっている。
「うん、そうだね」
そして、灯矢もまた冷静さを失わずにいた。
「な、なんで……」
菜摘は、そんな二人の姿に疑問を感じずに入られなかった。
「忘れたのか、菜摘? 病院には病人がいる。病人の場合、健康な人とは違って思うように逃げられない」
「だから、最近建てられた病院はそう簡単に壊れないようにしてある」
「あっ……」
菜摘はようやく思い出した。病院は特殊な建設法を使っているのだ。だから、少しの襲撃なら耐える事が出来る。
「そして、これ以上被害を出さないために、いるんだ」
そう言うと、勝は一人その場から駆け出して行った。
「……絶対、戻ってきてね、勝くん」
そして、粋はその後姿に一言、言葉をかけた。いつものように、彼の勝利を願って…

―8月2日火曜日午後2時28分―

病院のすぐ近くで、機械質な体を持った無数の蜂が病院に向かって攻撃を行っていた。それは、ゼイヴァの送った神機レイセクトだ。
レイセクトは、不気味な羽音の唸りを上げながらレーザーを撃ってくる。
次々と崩れる病院の周辺。
まだ完全に狙ってないのは、何か意図があるのだろうか。
「はぁぁっ!」
そこに、横方向から刀による攻撃が襲い掛かってきた。
レイセクトの集団の一部が、それによって両断されて地面に落ちていく。
「おぉりゃあぁぁ!!」
続けてドリルが次々と貫き、
「スピードッ、シューートォ!!」
エネルギー弾が砕き、
「はぁっ!」
打撃が破壊した。
「数で攻めてきたか……だけど!」
「数が多けりゃいいってモノじゃないぜ!」
「こんなに簡単にやられるようだったら、なおさらだな……」
「いずれにしろ、病院を攻撃はさせません!」
攻撃を行なったのは、順に神威、オーガファイター、オーガスピーダー、オーガディフェンダーだ。
だが、さまざまな攻撃によりレイセクトの数は半数以下となったのだが、すぐに増援がやってきてその数を戻した。
「増援……」
そして、レイセクトは一斉に神威達に向かって攻撃してきた。
「ディフェンス・トンファー!!」
すかさずオーガディフェンダーが前に立ち、レイセクトのレーザーを防御する。
キイィィィィンン……!!
そこに、一機の戦闘機がレイセクトの集団を裂いた。
「あれは、」
「ヴィクトリージェット!」
そう、それはヴィクトリージェット。
「とうっ!」
ヴィクトリージェットに搭乗する一つの影。それは、ヴィクトリー。

「チェンジ!」
ヴィクトリーが叫ぶと、ヴィクトリージェットはその姿を変形させはじめる。
ヴィクトリージェットの機首が折れ曲がり、機体後部の真ん中、後に腕となる部分が縦に半回転して機体前部に乗っかった。
次に、機体後部が横に回転し、脚を形成する。
腕となるパーツが横に開き、下に下りると中から手が現れ、腕を形成した。
最後に眼に光がともり、
「ヴィッ、ザァァァァァ!!」
ヴィザーと名乗ったロボットは、ボルディーズに向かってファイティングポーズを力強く取った。

「ヴィザー!」
「待たせてしまったな。一気に片付けるから、少し離れてくれ!」
「了解!」
ヴィザーのする事を察した四人は、すぐにヴィザーやレイセクトの集団から距離をとる。
それを確認した直後、ヴィザーは背中に背負っていたヴィクトリーブラスターをレイセクトの集団に向かって構えた。
ヴィクトリーブラスターにエネルギーが収束され、
「ヴィクトリィィィィィッ、ブラスタァァァァァッ!!!」
ヴィクトリーブラスターから強力なエネルギーが発射され、レイセクトにヒットした!
ズドドドドドドドドドドォォォッ!!
レイセクトは一気に大半を破壊され、再び少数となる。
「どうだ!」
ヴィクトリーブラスターを戻し、レイセクトの状況を確認する。
再び増援、数を戻す集団。
「また増援……」
顔をしかめる勇者達。
「くっ……! 神威、オーガディフェンダー! お前達に病院の守りを任せる! オーガファイターとオーガスピーダーは俺に続け!」
「了解しました!」
「了解!」
ヴィザーの指示に従い、それぞれの配置へとつく勇者達。

「守るとなれば、これで!」
神威は構えを取り、

「現れよ! 四聖獣、『玄武』!!」
と叫びながら手を開いて思い切り上に突き出す。

VES本部。
「玄武召喚・コール発動!」
「四聖獣・玄武、スタンバイ!」
オペレーターである日高の言葉と共に、巨大な亀の姿をしたマシン四聖獣・玄武が発進口にセットされ、
「発進!」
その言葉と同時に地を滑空していった。

しばらくして、玄武は神威の元へとたどり着くと変形を開始する。
玄武の肩の部分が横に開き、前足が後ろに伸びると腕を形成する。
同時に後部が伸び、左右に開かれた。玄武の後ろ足が最後部に上がり、つま先を形成する。
玄武の背部には、空洞が存在していた。
「はっ!」
神威は玄武に向かってジャンプするとその姿を手裏剣の形に変形させ、空洞と結合する。
同時に、腕から拳が出現した。
最後に、頭部が横に半回転して上向きの状態から前を向いた状態になると口を開き、中から顔が現れ、
「水神武装! 玄武ぅぅぅっ、神っ!!」
神威は玄武神と名乗り、大きく構えを取った。
玄武神―神威が四聖獣である玄武と水神武装する事によってこの姿になる事ができる。
玄武神となれば、神威の防御力は飛躍的にアップする。

「ヴィクトリィィィィィッ、フォオォォォォォムッ!!」
ヴィザーもまた、合体するために思い切り叫んだ。

数分たつかたたないかのうちにヴィクトリーマシンはヴィザーの元へたどり着いた。
ヴィクトリーマシンがヴィザーを囲むように周りを回り始めると、四機の間に特殊な磁場が発生する。

ヴィクトリーマシンが変形を始める。
グランドヴィクトリーの機体が縦に持ち上がり、機体前部が折れ曲がった。
グランドヴィクトリーの左右にあるパネルが開き、上に回転して翼を形成する。
機体後部が下に伸び、つま先が立って足を形成する。
次に、スカイヴィクトリー及びアクアヴィクトリーが変形する。
スカイヴィクトリーの機体後部が持ち上がり、その部分は肩を形成する。
機首が折りたたまれると、下腕を形成した。
アクアヴィクトリーの機体後部が分離し、尾翼が折りたたまれて同じように持ち上がり、その部分が肩を形成した。
そして、機体後部が前へと回転し、機首が折りたたまれ同じように下腕を形成する。
ヴィクトリーマシン三機はヴィザーの前で集結する。
グランドヴィクトリーは胸部から脚部及び翼、スカイヴィクトリーは右腕、アクアヴィクトリーは左腕となって。
そして、グランドヴィクトリーは胸部となる部分が欠損していた。
「はあっ!」
その時、ヴィザーが飛び上がり、ブロック状の形態となってグランドヴィクトリーに結合する。
それと同時にスカイヴィクトリーとアクアヴィクトリーはグランドヴィクトリーと結合し、拳を出現させた。
最後に、アクアヴィクトリーの後部を形成していたパーツは兜となり、ヴィザーの頭と結合する。
そして、フェイスマスクがヴィザーの顔をおおうと、ヴィザーの目に再び光がともり、
「ヴィッ!! ザリッ!! オォォォォォンン!!!」
ヴィザーはヴィザリオンと名乗り、大きく構えを取った。


―2010年8月2日月曜日午後2時49分―

次から次へと襲ってくるレーザー。しかし、それを玄武神は装備されている盾で、オーガディフェンダーは先程と同様自らの武器で防御している。
「無っ!!」
レーザーがやんだ一瞬をつき、玄武神は素早くレイセクトを刀で切り裂いた。
だが、レイセクトの集団は一向に増援を絶やさない。
「ファイティングドリルッ!!」
ドリルが貫き、
「スピードッ、シューートォ!!」
エネルギー弾が破壊し、
「エナジィィィィッ、インパクトォッ!!」
拳が砕いても、やはりそれは変わらない。
「くっ! 数が多すぎて、おまけに増援してくるからキリがありません!」
「いったいどうなってるんだ!?」
「私に聞かれても、わかりません……!」
「無駄口は叩かない方がいい……!」
勇者達にもさすがに焦りが見え始めてくる。
(何故だ……? 何故神の三天衆はこのような作戦を……?)
そんな中、ヴィザリオンは敵の行動に疑問を感じていた。
(そもそも、何故次から次へと増援が来られる……? 普通なら途切れる時があるはずなのに……)
キリのない戦いを行ないながらも、思考をめぐらせる。
『ヴィザリオン! 玄武神! オーガチーム! 一体何やってんだ!?』
「指揮!?」
そこに、各勇者に富士からの通信が入ってきた。
『お前たちが戦ってるのはいわば働き蜂の様なヤツだ! そいつらを造り出してる本体が別にいるんだよ!』
「!!」
勇者達はその言葉に驚く。だが、同時にその言葉で謎が解けた。
無限に送られてくる増援、そしてあまりにも今までと手ごたえの違う弱さ。
『分かったか。だったら、ヴィザリオンが本体ツブしに行ってこい! 残りは病院の徹底守護だ!』
「りょ、了解!」
富士の指示に従い、ヴィザリオンはレイセクトを造り出している本体を倒しにその場から離脱し、玄武神とオーガチームはその場にとどまる。

―2010年8月2日月曜日午後3時2分―

病院から少し離れた、田畑や家屋がまばらにある郊外。そこにゼイヴァは巨大な神機と共にいた。
その神機の姿は蜂の姿をしており、背中からは次々とレイセクトが飛び出している。これが、富士の言っていた本体なのだろう。
「いくら奴らと言えども、今回の持久戦には勝てまい……この神機ネスィトとレイセクトにはな」
これが、ゼイヴァの今回の作戦。
大群を使って破壊する。そこに勇者達が現れて戦う。ここまでは今までとほぼ変わりない。
だが、もし大群が決して尽きる事無かったら? それに対する答えは一つ。
勇者達は永遠に戦い続けなければならない。
「それに、仮にネスィトの存在に気づいたとしても、ネスィトを倒すことは出来……」
「エナジィィィィッ、インパクトォッ!!」
「!?」
突然、横から大きな衝撃がネスィトを襲った。
「ゼイヴァ、お前の仕業か!」
目に飛び込んできたのは、左腕を突き出していたヴィザリオン。
「ヴィザリオンか……他の仲間はどうした?」
ゼイヴァは、ヴィザリオンが一人だけなのをわざととぼけて尋ねた。
「それは、挑発と取っていいんだな?」
ヴィザリオンの声が低くなる。少し怒りを感じているのだろう。
「いずれにしろ、貴様はこのネスィトに攻撃するのだろうがな」
「……なら、遠慮なく行かせてもらう!」
ヴィザリオンは構えを取り、
「スタァァ、リィィィジョンッ!!」
腕を空に突き出してスターリージョンと叫んだ。

リージョンスターはヴィザリオンの近くまでやってくると、機体を十に分ける。
そのうち、内側を形成していた五つのパーツはヴィザリオンの左腕と結合し、フィニッシュスターとなる。
残りの五つのパーツ―ホールドスター―がフィニッシュスターと結合し、ヴィザリオンはそれが終わったのを確認するとネスィトに向かって再び構えた。
「ホォォォォォルドッ、リィィィィィジョンッ!!」
ヴィザリオンが左腕を思い切り突き出すと、ホールドスターが左腕から分離し、ネスィトを捕らえる。
そして、ホールドスターは鋭角部分から特殊エネルギーを発生させ、ネスィトの自由を封じた。
「フッ……」
ネスィトに乗っていたゼイヴァはホールドリージョンで自由を封じられる前に飛び上がってホールドリージョンから逃れる。
その表情は、なぜか嘲笑だった。
「はぁっ!」
ヴィザリオンが左腕を少し引くと、ホールドスターとフィニッシュスターの間に糸のようなレーザーが張られた。
「ヴィクトリィィィィィッ!!」
そして、ヴィザリオンはその糸に引っ張られるようにネスィトに向かって地表を滑空しながら突進し、
「フィニィィィィィッシュゥッ!!!」
左の拳をネスィトに向かって思い切り突き入れた!!

「フッ………」
「…………な、何……!?」
本来なら、そのまま突き抜けて終わらせるはずの展開。だが、今回は全く違っていた。
ネスィトを貫いていない拳、動かないネスィト、あざ笑うゼイヴァ。
ヴィクトリーフィニッシュが、敗れたのだ。
絶対に敗れるはずのないと信じて名付けられた名前が、音を立てて崩れる。
「貴様のその技は、私の神機に二度も通じん!」
「うわあぁぁっ!?」
突然、解かれるはずのないホールドリージョンがネスィトによって解かれ、その衝撃によってヴィザリオンは吹き飛ばされてしまった。
同時に、スターリージョンはバラバラと地面に落ち、機能を失った。
「最大の攻撃が敗れた今、貴様に手はない! ネスィトよ、存分に奴を痛めつけろ!」
ゼイヴァの指示を受け、ネスィトは反撃を開始した。
まず、ネスィトはその巨体を使い、ヴィザリオンに体当たりをかける。
「ぐうぅっ!!」
ヴィザリオンは低くうめき、背中から地面に倒れこんだ。また、それによって畑はつぶされ、家屋は壊れてしまう。
「…………………」
無言でヴィザリオンをにらみつけるゼイヴァ。
「くそっ……!」
ヴィザリオンはゆっくりと立ち上がり、ネスィトをにらむ。
ヴィクトリーフィニッシュが敗れた今、ヴィザリオンがネスィトに勝つ保証は限りなく0に近くなった。ヴィクトリーフィニッシュ以上の技を、ヴィザリオンは持っていない。
必然的に、残された選択が二つに絞られる。
一つは、降伏する事。
だが、選んでも結果は決して良くない。だから、ヴィザリオンにはその選択を選べない。
もう一つは、最後の最後まで勝利をあきらめず、エネルギーと体力が尽きるまで戦う事。
片方が選べない今、この選択を選ぶしかない。
自分は人々を守ると誓った勇者。だったら、絶対に最後まであきらめない。勝利を信じて。
「負けて……負けて、たまるかぁぁぁぁっ!!」
ヴィザリオンは大きな声で叫び、
「エナジィィィィッ、インパクトォッ!!」
左の拳をネスィトに向かって叩き入れようとする。
ガキィッ!!
だが、先程と同様、ネスィトにダメージを与える事が出来ない。ヴィクトリーフィニッシュと比べると、はるかにパワーの違うエナジーインパクトではなおさらだ。
「無駄だ!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
それでも、ヴィザリオンは決してその手を止めなかった。
「俺には、守るべき場所がある! 守るべき人がいる! だから、だから負けてられないんだぁぁぁ!!」
何度も何度も、その拳をネスィトに撃ちつけるヴィザリオン。
病院を守るため、そこにいる粋達や秋原を守るため、わずかに残された希望を信じて必死になる。
「無駄だと言うのが、分からないのか!?」
ネスィトは空中に飛び上がり、ヴィザリオンに向かって針を発射した。
「ウイング、スラァァッシュ!!」
ヴィザリオンは右腕の翼に形成されたエネルギーの刃でそれを受け止める。
「!!」
「ぐあぁぁっ!?」
それと同時に、ネスィトが再び体当たりを仕掛けてきた。連続で来るとは思わなかったため、ヴィザリオンは再び吹き飛ばされてしまう。
「フン……」
ヴィザリオンの無様な姿を見て、ゼイヴァは鼻で笑った。
「ぐっ……!」
「!?」
ヴィザリオンはまた立ち上がった。そして。ネスィトをしっかりと見据える。
「まだ立ち向かうか……ならばその志、貴様の命と共に刈り取ろう!!」
ネスィトは、ヴィザリオンに三度体当たりを仕掛けた。
さすがのヴィザリオンと言えども、三度目となるとさすがに持ちこたえられるかどうか分からない。
「くっ……!」
防御の体勢を取り、持ちこたえようとするヴィザリオン。
「ここでくたばれっ!!」
そして、ヴィザリオンとネスィトがぶつかり合おうとした、
「!?」
「!?」
まさにその瞬間であった。
突然、ヴィザリオンとネスィトの間を燃えるような赤い色の飛行体が通り過ぎていったのだ。
その事に驚いたネスィトとゼイヴァは、その勢いを止めてしまう。
「何だ!?」
ヴィザリオンとゼイヴァの視線がその飛行体に向けられる。
『ヴィザリオン!』
「長官!?」
それと同時に、ヴィザリオンに峯島から通信が入ってきた。
『今そこに、鳳凰がたどり着いたはずだ!』
「あの飛行体の事ですか!?」
視界に飛び込んできたのは、赤い身体の巨大な鳥―鳳凰だった。
『あれは、リージョンスターに続くヴィクトリーウェポンNo.2、その名はブレイドフェニックス』
「ブレイド、フェニックス……」
ヴィザリオンはもう一度、ブレイドフェニックスという名の鳳凰をまぶたに焼き付けた。
燃える炎のような赤い機体、鋭く光る翼、その鳳凰は機械質ではあったが、生き生きとしたエネルギーに満ち溢れている。
『そうだ。ブレイドフェニックスは変形してフェニックスブレイドとなる』
『瞬間の最大攻撃力は、ヴィクトリーフィニッシュを上回る計算だから』
峯島の言葉と同時に、霧山の声も聞こえてくる。
「ヴィクトリーフィニッシュを……」
『どんなに防御力のある敵でも倒せるはずだからね。キーワードはすでに転送してあるから、後は頑張ってね』
「副官……ありがとうございます!」
ヴィザリオンは霧山に礼を言うと、改めて構えを取り、
「モードチェンジッ! ブレイドフェニックス!!」
腕を空に突き出した。

ブレイドフェニックスは空を翔けながら、その姿を変形させていく。
首が縮んで頭部が胴体と結合したあと、両方の翼が前に来て、刃となる。
両足がたたまれ、横に広がって鍔となり、尾は持ち手となる。
変形が完了すると、ヴィザリオンは完成された剣を手にし、
「ブレイドッ! ヴィッ!! ザリッ!! オォォォォォンン!!!」
ネスィトに向かってフェニックスブレイドを構えた。
「この剣の力、見せてやる!」
「そんな剣など、へし折ってくれる!」
ネスィトがヴィザリオンに体当たりを仕掛ける。
「フェニックスブレイドッ!!」
同時にヴィザリオンが叫ぶと、フェニックスブレイドの刃が高熱を発して赤く光り始める。
「!?」
危険を感じたゼイヴァは、ネスィトから飛び上がって後ろに引いた。
「フェニックスッ、ディバイディイィィィィィッ!!!」
ヴィザリオンは大きく振りかぶり、フェニックスブレイドをネスィトに向かって思い切り振り下ろした!!
フェニックスブレイドとネスィトが激突し、辺りに衝撃波を撒き散らす。
「そのまま砕け!」
ゼイヴァの言葉を聞き、力を込めるネスィト。
「切り裂けえぇぇぇぇぇ!!」
「!?」
だが、ネスィトはフェニックスブレイドの切れ味に負け、自ら切り裂かれる結果となってしまった。
二つに切り裂かれた身体は、そのまま爆発、四散する。
「…………………」
あまりにも意外な光景に、ゼイヴァは口が開いたままふさがらない。
「……こ、今回はおとなしく引こう。だが、たとえどんな強力な武器を持っても、いずれは我らの前に屈することとなるのを忘れるな」
そして、やっと我に返ったゼイヴァは捨てゼリフを吐いて、その場から消えた。
「俺の……勝利だ!」

その後、玄武神とオーガチームも、増援の来なくなったレイセクト全て倒したとヴィザリオンの元に通信が入った。

―2010年8月2日月曜日午後4時29分―

御鈴川総合病院。
「勝くん!」
勝は、粋達四人と秋原の前に戻ってきた。
「今日はどうだった?」
「ちょっと、大変だった、かな?」
「大丈夫? 怪我とかしてない?」
「大丈夫だ。心配してくれてありがとう、粋」
「まあ、他の誰でもない勝だもの。負けるはずないわよね」
「そうだね」
五人は、五人にしか分からないような会話で談笑する。
「あの……」
そこに、秋原が声をかけてきた。
「どこに、行ってたんですか?」
「え、えっと……」
秋原の質問に、勝は戸惑った。粋達には正体を明かしているものの、さすがに他人には話す事が出来ない。
「し、仕事……かな?」
苦しいながらも、勝はそう答えた。決して合ってるとも言い切れないが、間違いでもない。無難な答えだ。
「そうですか。大変なんですね」
秋原はそれでも納得してくれ、勝は苦笑した。

そして、約1ヵ月後に秋原は無事出産を終え、生まれた自分の息子と共に退院したと言う。

To be continued…


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地獄へ落ちて、罪を償うがいい……!

オーガチームは、理論上合体が可能である。
合体すればその力は何十倍にも跳ね上がり、ヴィザリオンをも上回る力を持つ。
しかし、オーガチームはどういうわけか合体する事が出来ない。
その事に悩んでいた時、街でゼイヴァの襲撃が起こる。
戦う勇者達。そのさなか、オーガチームの合体が解かれる…

勝利勇者ヴィザリオン 第6話「鬼神光臨の時」

心の中の鬼が、目覚める……!

初回公開日:2002年8月28日

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