第3話「阻まれた勝利」


―2010年7月10日土曜日午前7時39分―

「………………」

街の中、ヴィザーが険しい表情で目の前にいるロボットをにらんでいた。
そんなヴィザーに対し、そのロボットは不敵な笑みを浮かべていた。

「ヴィザー!」

「来るな!」

そこに駆け寄る神威。だが、神威を近くに寄せ付けようとしないヴィザー。

「そこから一歩でもここに入ってきたら、お前も俺みたいになってしまうぞ!」

原因は神威にとってはよく分からない。だが、ヴィザーの言っていることは本当のようである。
神威自身、何故そう思ったのかはっきりとしない。

「!!」

その時、ヴィザーは空中に飛び上がって敵であるロボットの攻撃をかわした。

「うわあぁっ!?」

だが、連続して襲ってきた敵の攻撃に、ヴィザーは大地へと落ちていく。

ヴィザーが苦戦している理由、それを知るにはまず数日前にさかのぼる―――


第3話「阻まれた勝利」

―2010年7月7日水曜日午後8時47分―

勝はマンションの自分の部屋に入るとすぐに電気をつけ、靴を脱いだらそのまま椅子に座った。
「ふぅ……」
今日もあった戦闘による疲労がたまっているのだ。
そのままボーっと天井を見つめたまま、勝は今日のことについていろいろと考えていた。
(今回は随分と手ごたえがなかったな……いつもは強力な相手のはずなのに……何か妙だ……)
今日、勝ことヴィザリオンが戦った敵はやけに手ごたえがなかった。それどころか、相手はまるで自分の攻撃をわざと受けているかのような印象もあった。
敵の新たな策略か? それとも、他に何か理由があったのか?
だが、いろいろと考えてみても結局答えは出てこない。むしろ、考えれば考えるほど新たな疑問がわくだけだ。
(……だめだな。考えても答えが出てこない。今日はもう寝るか……)
仕方なく、勝はこれにて就寝しようとする。
その時、突然、電話が鳴り出した。
あまりにも突然だったので勝は一瞬驚いたが、電話だと直後に理解するとすぐに受話器を取った。
「もしもし」
『あ、勝くん?』
「粋……?」
奥から聞こえてきたのは、粋の声だ。だが、普通に考えるとこの時間に粋が電話をかけるのは不自然だった。
「どうしたんだ、一体? 何かあったのか?」
その疑問が頭をよぎり、ストレートに聞く勝。
『ううん、何もないよ。あ、でも……』
「?」
『今日、七夕だって覚えてた……?』
「あ……」
そう、今日は7月7日。七夕の日である。
しかし、常日頃から戦闘の事を気にかけている勝はその事を忘れてしまっていた。
「そういえばそうだったな」
『やっぱり忘れてたんだ。フフ……』
受話器の向こうから粋の小さな笑い声が聞こえる。
「な、何がおかしいんだ?」
その笑いが少し頭に来たのか、トーンを変えて言葉を返す。
『ご、ごめんね……それで、勝くんに聞きたい事があって……』
「俺に? 何だ?」
『七夕だから、お願い事するでしょ? 勝くんは何をお願いするかなって思って……』
「願い……か……」
そう言えばここの所そんな事を考えたことないな、と思いつつ、勝はしばらくの間考えてみた。
そして、頭に思い浮かんだものをそのまま口にした。
「……そうだな、『みんなのためにも一刻も早く平和が戻るように』かな?」
『勝くんらしいお願いだね』
「そうか?」
『うん、いつもヴィザリオンに乗って戦っている勝くん独特のお願い』
粋はそう言うと再び電話の奥で小さく笑う。
(本当は、もっと別の願いがあるんだが、粋に余計な心配をさせたくないからな……)
粋の笑いを聞きながら、勝は心の中にある傷を表に出さないように、つられたふりをして同じように小さく笑った。

―7月7日水曜日とある時刻―

聖なる宮殿ゴッドパレスにて、ゼイヴァは今日の戦闘を映像として目の前に映し、何か理解したように時々うなずいていた。
「何をやっているのだ、ゼイヴァ」
そこに、ブレイグがややトーンを低くした声で話しかけてくる。
「見て分からないか?」
ブレイグのわずかな変化を読み取ったにもかかわらず、ゼイヴァはいつもと変わらないそぶりを返した。
「そうではない。今回の戦闘の事だ。何だあの無様な敗北は? 俺をあれだけひどく言っておきながら、自分も同じように負けているではないか!」
「あれは敗北ではない」
怒りに任せて言葉を荒くするブレイグに対してあくまでも冷静に言葉を返すゼイヴァ。
「何だと?」
「あれは作戦の第一段階、いや、作戦準備といっておこう」
「どういうことだ?」
先ほどまで荒々しく聞いていたブレイグが、声色を変えてゼイヴァに問いただす。
「ヴィザリオンの攻撃パターンを読んでいたのだ。そして、今までのデータもあわせ、そのパターンが今分かった」
「何?」
ブレイグの表情が少し変化した。
「奴は、攻撃力不足と感じると合体する。これは仲間であろうこの神威というロボットにも言える」
ゼイヴァがそういいながら、目の前にヴィザーとヴィザリオン、神威と白虎神の映像を写す。
「ふむ、お前の言いたい事は分かった。ようは、その合体を封じればやつらはどうすることも出来ない。そうだろう?」
ブレイグがそういうと、映像でヴィザーが思い切りバツを付けられる。
「そうだ。あとはパニックに陥った奴らを……潰す!」
ゼイヴァは最期の言葉を口にすると同時に、拳に力を込めた。
「せいぜい失敗して自分の顔に泥を塗らないようにするんだな」
ブレイグはゼイヴァに向かってそういい残し、その場から去っていった。
そんなゼイヴァとブレイグのやり取りの横で、アルディアは目を閉じながら柱にもたれかかっていた。

―7月10日土曜日午前6時20分―

マンションの勝の部屋。
「………………」
勝はまだ半分寝ぼけながらも、テレビのリモコンを手にとってテレビをつけようとした。
「……?」
だが、リモコンのボタンを何度押してもテレビがつかない。
おかしいと思いながら、勝はテレビの主電源が落ちているのではとテレビを確認した。
だが、主電源はついている。
(コンセントか……?)
次に勝はテレビの裏に回った。テレビはちゃんとコンセントにつながっている。
ブレーカーが落ちてるのかもしれない、と思って勝はブレーカーを確認した。
ブレーカーは落ちていなかった。
(……故障か? いや、少なくとも昨日まではちゃんとついていたんだ。急に故障なんてありえない。だとすると……)
勝があれこれ考えていると、ヴィクトリーコマンダーが急に電子音を鳴らした。
勝は一瞬それに驚くが、すぐにボタンを押して応答する。
「こちら、翼守 勝!」
『勝君? 今すぐVESに来て!』
ヴィクトリーコマンダーから、オペレーターである日高の声が聞こえてきた。
気のせいか、日高の声がすこし聞こえづらい。
「どうかしたんですか、日高さん?」
『それが……』
『詳しい説明は後でするからさっさと来ぉいっ!!』
「っ!? りょ、了解!」
日高が何か言おうとしたが、それを富士が勝への怒鳴り声で制した。
富士の怒鳴り声に勝は先ほどよりも驚いてしまうが、取り合えず返事をするとすぐさま出て行こうとした。だが、
「……あ、」
今の勝の姿は寝巻きである。
慌てて勝は部屋に戻り、いつもの服に着替えると今度こそ部屋から飛び出して行った。

―7月10日土曜日午前6時48分―

VES司令室。
それに通じる扉が開き、そこから勝が入ってきた。
「遅いぞ、勝!」
しかし、入ってくるといきなり、富士の怒声を浴びせられる。
「すみません! ところで、一体何があったんですか?」
「……勝、今朝何か無かったか?」
勝が質問すると、峯島から逆に質問が返ってきた。
勝は何故質問されたのか疑問に思いながらも、今朝の事を思い返す。
「……そういえば、どこにも異常が無かったのにテレビがつかなかった……」
「やはりそうか……」
つぶやくように勝がそういうと、峯島は確信したようにうなずいた。
「どういう事なんだ?」
「実は、東京中で停電が起こっているのだ」
「何だって?」
勝が表情を変える。
「これも、あいつらの……?」
「こんな物を見せ付けられたら、誰だってそう確信するよ」
霧山が手前のキーボードを操作し、モニターにある物を表示させた。
「これは……!」
それは、発電所のありとあらゆるコードを自分につないでじっとたたずむ人型ロボットの姿だった。
「どう見ても人の手で造った物じゃないからね。彼らが造った物としか考えられないよ」
霧山の言う、彼らとは神の三天衆の事である。
神の三天衆が造ったロボットと聞き、勝の表情は一層険しくなる。
そして、勝は胸の中で決意を固めると、
「長官!」
「ああ、急いで向かってくれ!」
「了解!」
峯島から指示をこうむり、走って司令室を出て行った。
「日高オペレーター、神威の出撃準備を進めるんだ!」
「了解!」
峯島はその直後に日高に対して神威の出撃の指示を出した。

勝ことヴィクトリー出撃のため、VESがヴィクトリージェット発進準備を行なっていた。
「ヴィクトリージェット、スタンバイ!」
日高の言葉と共に、発進口にヴィクトリージェットが移動される。そして、ビクトリージェットの中ではすでに変身したヴィクトリーがヴィクトリージェットの最終点検及び発進準備の最終段階を行なっている。
同時に、発進口が音を立てながらその扉を開いていく。
「目標、東京エネルギー発電所へ!」
日高の位置確認が終わると、ヴィクトリーがヴィクトリージェットのエンジンを点火する。
「発進!」
ヴィクトリージェットは勢いよく発進し、空の彼方へと飛び立っていった。

―7月10日土曜日午前7時03分―

東京エネルギー発電所。
ここは、かつて20世紀の日本が経験した原子力発電所の事故により、原子力の危険性を懸念した日本が新たに発見したエネルギーによる発電を行なっている場所だ。
だが、そんな発電所も今は止まっている。いや、止められているといったほうが正しいだろうか。
発電所の建物にめり込むようにたたずんでいるロボットとゼイヴァ。
そのロボットは、ゼイヴァの配下である神機。名前はジルアと名付けられている。
ジルアの機体には巨大なコードが発電所からつながっていた。それで発電所からエネルギーと電力を奪い取っているのだ。
「そうだ……そうやってエネルギーを取り込むのだ、ジルアよ」
ジルアはゼイヴァの言葉にうなずくと、やや機体を動かした。
「待て!」
「!?」
そこに、何者かの声が聞こえ、驚いたゼイヴァとジルアは辺りを見回す。
すると、はるか遠方から戦闘機が二人―正確には一人と一機―の目の前を高速でよぎり、

「チェンジ!」
ヴィクトリーが叫ぶと、ヴィクトリージェットはその姿を変形させはじめる。
ヴィクトリージェットの機首が折れ曲がり、機体後部の真ん中、後に腕となる部分が縦に半回転して機体前部に乗っかった。
次に、機体後部が横に回転し、脚を形成する。
腕となるパーツが横に開き、下に下りると中から手が現れ、腕を形成した。
最後に眼に光がともり、
「ヴィッ、ザァァァァァ!!」
ヴィザーと名乗ったロボットは、ボルディーズに向かってファイティングポーズを力強く取った。

「来たな……ここが貴様の墓場になるとも知らずに……」
ゼイヴァは、ヴィザーに聞こえないぐらいの小さな声で嘲笑しながらつぶやいた。
「お前、神の三天衆の二人目だな!」
そんな事をゼイヴァがつぶやいたとも知らず、ヴィザーはゼイヴァに向かってビシッと指差す。
「順番としてはそうなるな。私は技の使徒ゼイヴァ。この名を心に刻み付けておくがいい」
「エネルギー発電所を襲って、一体何をするつもりだ!?」
「それは、この神機ジルアと戦ってその身で知るがいい!」
ゼイヴァの言葉と共に、ジルアは発電所と自分をつなげていたコードをすべて自分の機内にしまいこむと、ヴィザーに向かって腕からエネルギーで形成した銃弾を毎秒50発の速さで撃ち出した。
「くっ!」
ヴィザーはそれをかわし、空中からジルアに近づいて、
「はぁぁぁぁっ!!」
空中から蹴りを放つ。
「!?」
しかし、ジルアは蹴りを受けても、全く吹き飛んだり、ダメージに苦しむ様子が無い。
「くっ!」
ヴィザーは仕方なくいったんジルアから離れ、
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
今度はジルアに向かって真っ直ぐ拳を打ち出した。
ジルアはこれをいとも簡単にかわす。
「何っ!?」
ジルアはヴィザーの攻撃をかわすと、跳躍してヴィザーからやや間を取る。
ヴィザーはその意図が分からずに、ただ表情をこわばらせてジルアを見つめている。
「どうした、もう終わりなのか?」
ゼイヴァがヴィザーを挑発する。
それが頭に来たのか、
「まだ……終わりじゃ、ない!」
ヴィザーは背中に背負っていたヴィクトリーブラスターを取ってジルアに向かって構えた。
ヴィクトリーブラスターにエネルギーが収束され、
「ヴィクトリィィィィィッ、ブラスタァァァァァッ!!!」
ヴィクトリーブラスターから強力なエネルギーが発射され、ジルアにヒットした!
……かのように見えた。
「な、何っ!!?」
当たったように見えたのに、ジルアは全く無傷なのだ。
「フッ……フハハハハハ! その攻撃など、所詮直線の攻撃でしかない! 軌道が読めれば、最小限の動きでかわす事が可能!」
ジルアはヴィクトリーブラスターが当たる寸前に最小限の動きでかわし、再び元の構えを取ったのだ。
ゼイヴァの嘲笑がヴィザーの耳にいやらしく響く。
「だったら……これで!」
ヴィザーは体勢を元に戻すと構えを取った。
「来る……! ジルア、作戦最終段階を始めろ!」
ゼイヴァの命令に従い、ジルアは機体からいくつかビットを射出した。
ビットはヴィザーとジルアの周りを囲むと、互いに向かって網状に電磁波のようなエネルギーを放出する。
それは、まるでヴィザーとジルアを檻の中に閉じ込めたようだ。
そんな事にやや疑問を抱きつつ、ヴィザーは、
「ヴィクトリィィィィィッ、フォオォォォォォムッ!!」
と思い切り叫んだ。

しかし、しばらく経っても、何も起こらない。
「合体……できない!?」
「フッ……」
「な、何故だ!? 何故ヴィクトリーフォームできないんだ!?」
自分の身に起こった異常に驚くヴィザー。
「ハッハッハッハッハ!! これぞ、我が作戦! ヴィザー、貴様は合体できなければ赤子も同然!」
「何!?」
ヴィザーがゼイヴァの言葉に驚くと同時に、ジルアは腕から銃弾を打ち出した。
「うわあっ!!」
突然の事に何も出来なかったヴィザーはジルアの攻撃をそのまま受け、吹き飛んでしまう。


「くっ……」
ヴィザーは傷ついた体を起こしながら、ジルアをにらんだ。
「………………」
ジルアは、そんなヴィザーに対してただ不敵な笑みのようなものを浮かべていた。
「ヴィザー!」
そこに、遅れながらも出撃してきた神威がやってくる。
「来るな!」
「!?」
だが、ヴィザーは神威を近づけさせまいと思い切り怒鳴った。
「そこから一歩でもここに入ってきたら、お前も俺みたいになってしまうぞ!」
「ど、どういう事ですか?」
神威は、ヴィザーのいう事が理解できずに一瞬戸惑う。
だが、その理由はすぐに分かった。
目の前には、よく見ると電磁波で出来た網のようなものが張られている。そして、それを形成していると思われる無数のビット。
「ま、まさか……」
神威の回路に、一つの答えが導き出された。

「ヴィザーの仲間が来たか……だが、これも予測範囲内。迎え撃つのだ、ビットよ!」
だが、それと同時にゼイヴァの命令が下り、ビット達が網を崩さずに方向を向き直って神威に向かって一斉にレーザーを放った。
「っ!」
神威は慌てて思考をビットに向け、レーザーをかわす。
だが、ビットは着地する暇も与えずに次々とレーザーを撃ってくる。
「くっ……!」
神威も当たるギリギリの所で何とかかわしているが、一瞬でも気のゆるみが起きればレーザーは神威に命中し、次々と神威に穴を開けるだろう。
持ち前のスピードでかわすが、常に襲ってくるレーザーに神威は翻弄されてしまっている。

「貴様の仲間はビットに任せよう。ヴィザー、貴様の相手はこの神機ジルアだ!」
神威がレーザーをかわしている頃、ジルアもヴィザーに向かって攻撃を始めた。
ジルアがヴィザーに向かってミサイルを発射する。
「!!」
ヴィザーは空中に飛び上がって何とかミサイルをよけた。
「うわあぁっ!?」
だが、連続して撃たれたミサイルをヴィザーはまともに受けてしまい、地面に落ちてしまう。
「ぐっ……」
かなりのダメージを受けているにもかかわらず、立ち上がってジルアの方を向くヴィザー。
「苦しむがいい……そうやって、同じ苦しみを味わうのだ……」
ヴィザーの傷ついていく姿を見て、嘲笑するゼイヴァ。

―7月10日土曜日午前7時43分―

神威は、未だにビットのレーザーの雨を必死にかわしていた。
「…………………」
その間にも、神威は必死にこの状況を打破する方法を思考していた。
(一番手っ取り早いのは私がビットに近づいてこの神で斬る事……しかし、それだと近づいた瞬間にやられてしまう可能性が非常に高い…
白虎神に合体すればスピードが上がり、攻撃できる確率も上がると思うが、この攻撃スピードだとそれも微々たる物…
ヴィザーが内側から攻撃するという手もあるが、状況から察するにヴィクトリーブラスターは使えなくなっている。例え使えたとしても、一発しか使えないため全てを破壊することは不可…
となると、残りは一つ……)
神威は大きくビットをよけると、素早くビルの陰に隠れた。
ビットは神威に向かってレーザーを撃つが、ビルが盾となって攻撃が当たらない。
しかし、ビルもそんなに長くは持たない。レーザーの雨を受けて少しずつではあるが壊れていっている。
「すみません、盾として使わせてもらいます」
神威は、この場にはいないビルの所有者に向かって謝ると構えを取り、

「現れよ! 四聖獣、『青龍』!!」
と叫びながら手を開いて思い切り上に突き出す。

VES本部。
「青龍召喚・コール発動!」
「四聖獣・青龍、スタンバイ!」
オペレーターである日高の言葉と共に、東洋の龍の姿をしたマシン四聖獣・青龍が発進口にセットされ、
「発進!」
その言葉と同時に空を駆けていった。

しばらくして、青龍は神威の元へとたどり着くと変形を開始する。
龍の肩から前足の部分が前に開き、真っ直ぐ下に伸びると腕を形成した。
身体全体が前後に伸び、龍の後足が身体に折りたたまれ、尾の部分が縦に回転するとつま先が立ち、足を形成する。
龍の腹部であった部分は背部となり、そこには空洞が存在していた。
「はっ!」
神威は青龍に向かってジャンプするとその姿を手裏剣の形に変形させ、空洞と結合する。
同時に、腕の爪が折りたたまれて拳が出現した。
最後に、青龍の頭部が横に半回転して上向きの状態から前を向いた状態になると口を開き、中から顔が現れ、
「風神武装! 青龍ぅぅぅっ、神っ!!」
神威は青龍神と名乗り、大きく構えを取った。
青龍神―神威が四聖獣である青龍と風神武装する事によってこの姿になる事ができる。
青龍神となれば、神威の技力は飛躍的にアップする。

「はっ!」
青龍神はビルの影から勢いよく飛び出した。
ビットは青龍神を神威と同一の存在だと認識すると、すぐさまレーザーを青龍神に向かって撃つ。
「くっ……」
青龍神は身を縮めて出来るだけレーザーを受けるのを少なくし、ビットに近づくと、
「疾風の鎚!」
どこからともなく取り出した、龍を模している、柄の長い金槌を手に持ち、
「破壊っ!!」
一機のビットに向かって勢いよく振り下ろした。
ビットは原形をとどめておらず、そのまま爆発した。
一機のビットがなくなったことによって、網に一瞬穴が開いたがすぐさま他のビットが補って穴を埋めてしまう。
「はぁっ!」
青龍神はすかさず網の真上、ちょうどビットが描いている円の中心の真上に来ると、
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
まるでゴルフのスイングのように鎚を振りながら身体を回転させた。
すると、ビットは次々と鎚によって破壊され、爆発四散して消滅していく。

「何っ!?」
ビットが次々と破壊されていく光景を見て、ゼイヴァは驚いていた。
「神威……いや、青龍神!」
同時に、ヴィザーの表情が明るくなる。
「ヴィザー! 早く合体を!」
「おう!」
ヴィザーは傷ついた身体を再び持ち上げて構えを取り、

「ヴィクトリィィィィィッ、フォオォォォォォムッ!!」
と思い切り叫んだ。

数分たつかたたないかのうちにヴィクトリーマシンはヴィザーの元へたどり着いた。
ヴィクトリーマシンがヴィザーを囲むように周りを回り始めると、四機の間に特殊な磁場が発生する。

ヴィクトリーマシンが変形を始める。
グランドヴィクトリーの機体が縦に持ち上がり、機体前部が折れ曲がった。
グランドヴィクトリーの左右にあるパネルが開き、上に回転して翼を形成する。
機体後部が下に伸び、つま先が立って足を形成する。
次に、スカイヴィクトリー及びアクアヴィクトリーが変形する。
スカイヴィクトリーの機体後部が持ち上がり、その部分は肩を形成する。
機首が折りたたまれると、下腕を形成した。
アクアヴィクトリーの機体後部が分離し、尾翼が折りたたまれて同じように持ち上がり、その部分が肩を形成した。
そして、機体後部が前へと回転し、機首が折りたたまれ同じように下腕を形成する。
ヴィクトリーマシン三機はヴィザーの前で集結する。
グランドヴィクトリーは胸部から脚部及び翼、スカイヴィクトリーは右腕、アクアヴィクトリーは左腕となって。
そして、グランドヴィクトリーは胸部となる部分が欠損していた。
「はあっ!」
その時、ヴィザーが飛び上がり、ブロック状の形態となってグランドヴィクトリーに結合する。
それと同時にスカイヴィクトリーとアクアヴィクトリーはグランドヴィクトリーと結合し、拳を出現させた。
最後に、アクアヴィクトリーの後部を形成していたパーツは兜となり、ヴィザーの頭と結合する。
そして、フェイスマスクがヴィザーの顔をおおうと、ヴィザーの目に再び光がともり、
「ヴィッ!! ザリッ!! オォォォォォンン!!!」
ヴィザーはヴィザリオンと名乗り、大きく構えを取った。

「くっ……合体されてしまったか……」
「さあ、反撃開始だ!」
ヴィザリオンは構えを取り、戦闘を再び始めた。
「ウイング、スラァァッシュ!!」
ヴィザリオンは右腕の翼によって形成されたエネルギーの刃を振りかざし、ジルアに向かって突撃する。
「ムン!」
同時に、青龍神は疾風の鎚と妖刀・神を持って構え、
「闇っ!!」
同様にジルアに向かって走り出した。
「迎え撃て、ジルア!」
ゼイヴァの命令を受け、ジルアはヴィザリオンと青龍神に向かってミサイルを撃ち出す。
しかし、ヴィザリオンにはエネルギーの刃によって裂かれ、青龍神には鎚と刀の挟み斬りで裂かれてしまった。
「はぁぁっ!」
ヴィザリオンはそれで止まることなく、ジルアの腕をエネルギーの刃で切り裂いた。
「っ!!」
ジルアは思わずよろめいてしまい、ジルアに乗っていたゼイヴァも落ちそうになってしまう。
何とか体勢を元に戻すが、ゼイヴァの表情は怒りに満ちていた。
「く……ジルア、奴らに世界の終わりを見せてやるのだ!」
ゼイヴァの命令を受けると、ジルアは構えを取った。
すると、ジルアの胸の部分が開く。
中には、大量のミサイルが搭載されていた。
「! まずい!」
それを見た瞬間にヴィザリオンの頭には次の瞬間の光景が予想された。
「撃てぇ!!」
ほぼ同じタイミングで、ゼイヴァの命令が下る。
次の瞬間、ジルアの機体の各部からミサイルやレーザー、マシンガンなどが発射され、ヴィザリオンと青龍神に向かって襲ってきた。
「!!」
青龍神は驚き、その場に立ちすくんでしまう。
「エナジィィィィッ、インパクトォッ!!」
だが、ヴィザリオンはとっさにエネルギーに包まれた拳を突き出し、ミサイルやレーザーの雨の中に飛び込んでいった。
「ヴィザリオン!」
青龍神の目の前で爆発が起こる。

「…………………」
「勝った……!」
青龍神は絶望し、ゼイヴァは自分の勝利を確信したが、次には二人の立場が逆転していた。
「っ!」
「何っ!?」
なんと、爆煙の中にヴィザリオンの姿があるではないか。
ヴィザリオンはあの攻撃の雨を、最大にまでエネルギーを引き出したエナジーインパクトで見事に粉砕したのだ。
「俺は……絶対負けない!」
ヴィザリオンは拳を戻し、再び構えを取った。
「行くぞ! スタァァ、リィィィジョンッ!!」
ヴィザリオンは腕を空に突き出し、スターリージョンと叫んだ。

リージョンスターはヴィザリオンの近くまでやってくると、機体を十に分ける。
そのうち、内側を形成していた五つのパーツはヴィザリオンの左腕と結合し、フィニッシュスターとなる。
残りの五つのパーツ―ホールドスター―がフィニッシュスターと結合し、ヴィザリオンはそれが終わったのを確認するとジルアに向かって再び構えた。
「ホォォォォォルドッ、リィィィィィジョンッ!!」
ヴィザリオンが左腕を思い切り突き出すと、ホールドスターが左腕から分離し、ジルアを捕らえる。
そして、ホールドスターは鋭角部分から特殊エネルギーを発生させ、ジルアの自由を封じた。
「くっ!」
ジルアに乗っていたゼイヴァはホールドリージョンで自由を封じられる前に、かろうじて飛び上がってホールドリージョンから逃れる。
「はぁっ!」
ヴィザリオンが左腕を少し引くと、ホールドスターとフィニッシュスターの間に糸のようなレーザーが張られた。
「ヴィクトリィィィィィッ!!」
そして、ヴィザリオンはその糸に引っ張られるようにジルアに向かって地表を滑空しながら突進し、
「フィニィィィィィッシュゥッ!!!」
左の拳をジルアに向かって思い切り突き入れた!!
ジルアは激しい苦痛を受け、そして蓄積されたダメージに耐え切れず爆発、四散した。
「俺の……勝利だ!」

「ぐっ……」
戦闘終了直後、青龍神はその場に片膝をついてうずくまってしまう。
「大丈夫か、青龍神?」
「やはり、この武装はエネルギーを激しく消費してしまいます……ですが、心配しないでください。いつもの事ですから……」
青龍神はそう言ってヴィザリオンに向かって多少無理をしながらも笑顔を作った。
「それより、ヴィザリオンの方も大丈夫ですか? 合体前にかなり攻撃を受けていたようですが……」
「お互い、相当のダメージだな……今日はゆっくりと休んだ方がいいな」
「そうですね」
二人は同時に笑った。

―7月10日土曜日とある時刻―

聖なる宮殿ゴッドパレス。
「結局お前でもやられてしまったのか……?」
ブレイグがゼイヴァに向かって必死に怒りを抑えながら問いただす。
「誤算があったのだ。まず、第一にヴィザリオンの仲間に別の合体があった事。第二に、それに対抗できる力がジルアになかった事。第三に……」
「言い訳など聞かん!」
ゼイヴァの言葉に、言葉を荒くして怒鳴るブレイグ。
「やはりお前が出る幕はまだ早すぎたのだ! いいな、次は俺が行く!」
ブレイグはゼイヴァに向かってそういい残すと、その場から去ろうとする。
「!?」
だが、その時目の前にアルディアが立ちはだかったため、ブレイグは足を止めた。
「そこをどけ、アルディア」
「破壊をするんだったら、まず第一にあの邪魔者を倒した方がいいと思うけど?」
アルディアはアドバイスとも取れる言葉をブレイグにかけると、すぐに横に退いた。
「フン……」
その言葉を受け取ったのかどうか分からないが、ブレイグはアルディアが退くとすぐに再び歩き始め、去っていった。

To be continued…


Next preview

私達が守ります!

VESのロボットと仲良くなった少年。少年の友と言うべきロボットは、鬼の姿を持っていた。
だが、それでも平和を願う優しき心を持っている勇者なのだ。
ある時、ブレイグは自ら街に出現して破壊を始めた。
ブレイグに対峙するヴィクトリー、そしてブレイグの神獣に立ち向かう守護者達。
平和を守るため、少年を守るため、守護者達は戦う。

勝利勇者ヴィザリオン 第4話「鬼の名を持つ守護者」

心の中の鬼が、目覚める……!

初回公開日:2002年6月15日

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です