第1話「来臨」


―2010年4月12日―

その日、地球は大きな天災によって絶望が巻き起こった。

―我は貴様らを『悪の存在』と審判を下し、罰を与える……

神が、人類に悪という名の烙印を押し、人類の殺戮と人類が築き上げた建造物の破壊を行なった。
理由も聞かされず、ただ抵抗も出来ずに消えていく人類。全てが破壊されていく。

「待て!!」

そこに、人類の守護神とも言うべく者勇者が現れた。
勇者は神と戦い、破壊と殺戮を止めようとする。

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

―はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

そして、神と勇者の戦いに決着はついた。

―な、何だと……!?

神は勇者に敗れ、地球上から消え去った。そして、この戦いは終わったかのように思えた。
だが、

「我々は、神に仕えし者」

「な、何だと!?」

勇者の前に神に仕えし者と名乗る者達が現れ、戦いは人類が罪を悔い改めない限りは続く事を告げた。

それでも、とりあえずは地球に平和が戻った。
人々は再び全てを作り直し、元の生活へと返った。
そして、何事もないまま数ヶ月がすぎた―――


第1話「来臨」

―2010年6月21日月曜日午前7時54分―

人々は仕事場や学校などに向かっている時間。
「はぁ……ぁぁ……」
少年は歩きながらあくびをする。
「ふぅ……」
15歳である少年翼守 勝(つばさもり しょう)も自分の通う私立流沢(ながれさわ)スクールに向かう所だ。
ここは東京湾に6年前突然隆起して出来た土地にある海上(かいじょう)区大河(おおかわ)町。決して安全とはいえないが平和な町だ。
勝はこの町に越してきて数ヶ月だが、この町を気に入っていた。
東京都の中では最も自然が多いといわれているからだ。勝は自然が好きなのである。自然を見ていると、心が落ち着くのである。
今歩いている道にも自然があふれていた。
「おはよう、勝くん」
その時、後ろから少女の声が聞こえてきた。勝が振り向くと、自分と同じ年頃の少女が笑顔でたたずんでいた。
「ああ、粋、おはよう」
勝は少女のことを粋と呼んだ。
少女の名は星月 粋(ほしづき すい)。勝と同じく流沢スクールに通っている少女だ。
「今日は空がいつもより青くてきれいだね」
「ああ、そうだな」
粋の笑顔を見て、勝は和んだような気持ちになった。
まるで、数ヶ月前の出来事がなかったかのように。
「朝から仲がいいわね、ラブコメって感じで」
そこに、再び後ろから声が聞こえてくる。二人が振り向くと、そこにはまた勝達と同じ年頃の少年と少女がいた。
「あっ、菜摘ちゃん」
「おはよう、勝君」
「ああ、おはよう、賢」
少女は菜摘と、少年は賢と呼ばれた。
少女らの名は百合野 菜摘(ゆりのなつみ)と木葉 賢(このは けん)。勝達と同じく流沢スクールに通っている。
「しかし、ラブコメってまた古い言葉だな。それに、俺達は普通の会話をやっていただけだぞ?」
「いいじゃないの、細かいことは」
そう言って菜摘は笑う。
「細かいかなぁ……?」
粋は首をかしげる。
「みんな、おはよう」
「あっ……」
「おはよう、灯矢」
三度勝達は声をかけられた。振り向くと、今度は少し大人びた少年が笑顔で立っていた。
少年の名前は空崎 灯矢(そらざき とうや)。勝達と同じく流沢スクールに通っている16歳の少年で、勝達にとっては兄的存在である。
「楽しそうな会話をしていたようだけど、僕も混ぜてくれるかな?」
「もちろんっ!」
菜摘が笑顔で答える。
「ところでさ、勝君。この前の事、話してよ」
「またか? これで何度目なんだ?」
あきれた感じで、勝は賢に聞き返した。
この前の事とは、数ヶ月前の神と勇者の戦いの事である。そして、勝はその神と戦った勇者なのだ。
そのことを知っているのは一部を除けば勝を含め、この場にいる五人だけである。
「ロボットの話は、何度聞いても飽きないからね」
「こら、賢。あまり勝を困らせないの」
そんな賢を、菜摘は手で賢の頭を押さえながら止めた。
「いたた……いいじゃないか、別に」
「だーめ。さあ、さっさと行きましょ」
菜摘は賢を抑えながらさっさと歩き出した。
「なんだ、二人も仲いいじゃないか」
勝が皮肉るように言う。
「私たちは幼なじみよ。仲いい所のどこが悪いのよ?」
「悪いなんていってない。むしろ、うらやましいぜ」
「分かればよろしい」
五人の間に笑いが生じた。

―6月21日月曜日とある時刻―

ここは異次元にある聖なる宮殿ゴッドパレス。
ゴッドパレスの中央に位置する大広間に、三人の男がある目的のために集まった。
「これで神の三天衆がそろったな」
魔道士のような姿をした男が残りの二人の顔を見て改めてそろったことを確認する。
「体の使徒ブレイグよ、第25銀河太陽系第三惑星・地球に住む人間の状況はどうだった?」
「この数ヶ月の間、人間の素行を調べたが、やはり変わっていない」
ブレイグと呼ばれた竜の騎士のような姿をした男は魔道士に向かって報告をする。
「己の好き勝手に生き、罪が何なのか分からずにのうのうとしている」
「そうか……やはり、戦いを再び始めなければならないか………それで、心の使徒アルディアよ」
「はっ」
アルディアと呼ばれた三人の一人である少年は返事した。
「我らが創生神ライヴァス様のご様態は?」
「今の所は問題ない。この調子であれば、あと18神月あれば完全復帰なさる、技の使徒ゼイヴァ」
「分かった」
ゼイヴァと呼ばれた魔道士は報告を聞いて深くうなずく。
「さて、人間の始末はどうしたものか……?」
ゼイヴァは話を切り替え、人間についてどうするか話し合うことにした。

彼らはライヴァスと言う名の神に仕える者達、神の三天衆だ。
ライヴァスは以前に人間達は悪の存在だとして制裁を加えた。それが、数ヶ月前に起こった神と勇者の戦いである。
そして、ライヴァスは勇者に負けて深い傷を負った。
ライヴァスの代わりに動いたのが、神の三天衆なのだ。彼らは人間の素行を再び調査し、本当に人間が悪の存在なのか見極めようとした。
その結果、人間は再び悪という名の烙印を押された。

「その初戦、このブレイグに任せてはくれないか?」
その時、ブレイグが急に言葉を出した。
「私は別に問題ない。アルディアはどうだ?」
「僕も構わない。それに、僕はライヴァス様の側近だ。行きたくても、行けないのが現状さ」
「全員一致だな。それじゃあ、行かせてもらう」
そういって、ブレイグは踵を返してその場を去っていった。
「……では、ここで解散としよう」
ゼイヴァの言葉と共に、ゼイヴァとアルディアは別方向へと歩みだし、神の三天衆による会議は解散された。

―6月21日月曜日午前11時17分―

東京都新宿区。
「………………」
そこに、ブレイグは声も出さずに現れた。
「なんと醜い……人間が害虫のように見える……」
ブレイグは、その光景に驚いていた。
乱立するビル、道を行き交う車に大衆。その全てがブレイグにとって気に入らなかった。
「おろかな人間よ、己が生み出した物で死に行くがいい……!!」
ブレイグがそういうと、ブレイグの手から一つの光が落ちて行く。

光はビル内に侵入し、コンピューター内に吸い込まれていった。
「ん?」
すると、そのコンピューターは突如画面をゆがませ、異常音を発し始める。
「な、何だ!?」
「バグか!?」
部屋の中にいた人々は驚き、どうすればいいか分からずに戸惑う。
「フ……フハハハハハハハ!!」
「うわあっ!?」
その時、突然コンピューターが笑い始めた。
「人間よ、滅べ! そして、地獄で己の罪を悔やむのだ!」
次の瞬間、コンピューターから電気コードなどの触手が飛び出し、次々と自分の周りの機械を取り込んでいった。

―6月21日月曜日午前11時24分―

流沢スクール第1教室。ここでは下は6歳、上は17歳までの少年少女達が入り混じって好きに勉強を行なっている。
流沢スクールは世界でも類を見ない教育方法を起用しているのだ。
小学校から高等学校という垣根を取り払い、どんな子どもたちも自由に好きな勉強をさせる。そうすることによって、個性を伸ばそうとしているのだ。
「―おかげで、こうして自由な勉強を出来るって事」
灯矢が子供達に先ほどの説明を話していた。
「灯矢の説明はいつ聞いても丁寧だな」
その横で、四人は同じ机を使って勉強していた。
「勉強も大の得意でオマケにルックスも問題なし、さらに性格まで申し分なしだからね」
「だからよね、灯矢ファンクラブなんて出来るのは」
四人が同時にうなずく。
灯矢ファンクラブとは、流沢スクール内に出来ている空崎灯矢をこよなく愛する者達―中にはその愛がゆがんでいる者もいるが―の集いである。それほど灯矢は人気があるのだ。
「!!」
その時、勝はある異変を感じた。
「どうしたの、勝くん?」
粋が勝の方を見ると、勝は右腕につけている腕時計のような物をじっと見ていた。
「ヤツらが、再び現れた……!」
「……また、行くんだね」
三人が勝の事を心配そうな目で見る。
「ああ。それが俺のやらなきゃいけない事だからな」
「絶対、絶対帰ってきてね」
「粋がまたお弁当を持って待ってるって」
「帰ってきて、僕にまた話を聞かせてよ」
三人の言葉を受けると、勝は立ち上がり教室を走って出て行った。

「こちら、翼守 勝! VES、応答願います!」
勝は外に出ると、人気のない所に入り、腕につけた装置―ヴィクトリーコマンダー―のボタンを押して話し始める。
『こちら、Valiant Earth Saviors』
装置の置くから、女性の声が聞こえてきた。

Valiant Earth Saviors、通称VESは宇宙及び地球内で平和を脅かすものに対抗すべく立ち上げられた組織である。
勝はそのVESに所属しており、平和を脅かすものと戦っているのだ。
とはいっても、ここ最近はそういったものは出てきておらず、平和に暮らしていた。

「長官をお願いします!」
『こちら、峯島』
峯島(みねじま)と名乗った人物は勝の言葉にすぐに対応する。
「ついに再開したな……」
『ああ、場所は新宿だ。急いで向かってくれ!』
「了解!」
勝が思い切りに答えるとすぐさま構え、
「ヴィクトリィィィィィッ、チェェェェンジッ!!」
の掛け声と共にヴィクトリーコマンダーのボタンを押した。
すると、勝の体を青い装甲が包んでいく。
装甲が完全に体を包むと、最後に勝の頭を覆い、目の部分にはゴーグルがセットされた。
ちなみに、この姿の時の勝はヴィクトリーと呼ばれる。
「来い! ヴィクトリー、ジェットォッ!!」
ヴィクトリーはそう叫びながら手を上にかざす。

VES本部。ここで、ヴィクトリーのヴィクトリージェット発進要請を受けたVESが発進準備を行なっていた。
「ヴィクトリージェット、スタンバイ!」
オペレーターである日高(ひだか)の言葉と共に、発進口にヴィクトリージェットが移動される。
同時に、発進口が音を立てながらその扉を開いていく。
「目標、東京都海上区大河町上空経由、新宿区へ!」
日高の位置確認が終わると、ヴィクトリージェットがひとりでにエンジンを点火する。
「テイク、オフ!」
ヴィクトリージェットは勢いよく発進し、空の彼方へと飛び立っていった。

再び大河町。
「来た!」
ヴィクトリーは空の彼方からヴィクトリージェットがやってきたのを確認すると、
「とうっ!」
空に向かって思い切りジャンプし、コクピット部分が開いたヴィクトリージェットに乗り込んだ。
そして、そのまま再び空の彼方へと消えていった。

―6月21日月曜日午前11時35分―

東京都新宿区。
「フハハハハハハハ!! 壊れろ! 崩れるのだ!」
コンピューターから生み出された魔物は、新宿のビルを次々となぎ倒していく。
「そうだ、破壊するのだ! 我が神獣ボルディーズ!!」
「おう!」
ブレイグの言葉を聞き、ボルディーズと呼ばれた魔物はその手を激化させる。
だが、
「!?」
突然ボルディーズの目の前を戦闘機が通り、動きを止めさせた。
「何っ!?」
驚くブレイグとボルディーズ。

「チェンジ!」
ヴィクトリーが叫ぶと、ヴィクトリージェットはその姿を変形させはじめる。
ヴィクトリージェットの機首が折れ曲がり、機体後部の真ん中、後に腕となる部分が縦に半回転して機体前部に乗っかった。
次に、機体後部が横に回転し、脚を形成する。
腕となるパーツが横に開き、下に下りると中から手が現れ、腕を形成した。
最後に眼に光がともり、
「ヴィッ、ザァァァァァ!!」
ヴィザーと名乗ったロボットは、ボルディーズに向かってファイティングポーズを力強く取った。
このロボット、ヴィザーこそが数ヶ月前に神と戦った勇者なのである。
ヴィザーはヴィクトリーと融合し、あらゆるヴィクトリーの動作がそのままヴィザーの動作となる。

「現れたな、我らが敵!」
ブレイグがそういいながらゆっくりと降下し、ボルディーズの肩に乗る。
「出たな、神の三天衆!」
「俺は神の三天衆が一人、体の使徒ブレイグ! 我らが創生神ライヴァス様に代わって、人間に裁きを与えに来た!」
ブレイグはビシッとポーズをつけ、名を名乗った。
「何が裁きだ! 人の命を何だと思っている! お前達の企みは、この俺が止める!」
「企みだと? フン、勘違いもいい所だな!」
「何!?」
「貴様に言う必要などない! 行け、ボルディーズよ! 我らが敵を倒すのだ!」
「了解!」
ブレイグの言葉を聞き、ボルディーズは行動を始める。


「おぉりゃあぁぁぁ!!」
「ぐっ!」
ボルディーズのパンチを防御するヴィザー。だが、その力にやや押されていた。
「うおぉぉぉっ!!」
負けじとヴィザーも攻撃するが、
「何っ!?」
いとも簡単に受け止められてしまう。
「そんな生ぬるい攻撃、この俺に通じるはずがない!」
バキィッ!
「ぐあっ!」
ヴィザーはボルディーズの攻撃を受けてしまう。
その反動でビルにぶつかりそうになるが、ブースターを逆に噴かしてその手前で止まった。
「!!」
「はぁっ!」
「うわあっ!」
しかし、続けてボルディーズが攻撃してきたため、ヴィザーは吹き飛ばされ後ろのビルを壊してしまう。
『おい、何やってるんだヴィザー!』
「指揮!」
その時、ヴィザーに通信が入ってきた。

VES司令室。
「人々を守るお前が壊したら意味がないだろうが!」
首に赤いスカーフを巻いた男が通信機に向かって怒声を浴びせる。
「富士指揮官、そう怒るな」
司令室の中央にあるデスクの所に立っている男―この男こそ、ヴィクトリーこと勝が長官と呼んだ人物、峯島である―がなだめようとした。
「峯島は黙ってろ!」
富士(ふじ)と呼ばれた男は、峯島に先ほど通信機に向かって行なったのと同じように怒声を浴びせる。
「まあまあ、富士君。落ち着いて」
峯島と同年代の男―副官である霧山(きりやま)―が富士をなだめる。
「ちっ……」
すると、今度はあっさりと素直に聞き、椅子に座った。
『……確かに、この俺がこんなことやってちゃいけない』
そこに、ヴィザーからの返答が通信機から聞こえてくる。

「人々のためにも、俺は、絶対負けない! 地球は、俺が守る!」
ヴィザーが自分自身に向かって言うように決意を言葉にすると、背中に背負っていたブラスター砲を取ってボルディーズに向かって構えた。
「!?」
ボルディーズが一瞬驚きを見せる。
その間に、ブラスター砲にエネルギーが集束されていく。
「行くぜ!」
そして次の瞬間、
「ヴィクトリィィィィィッ、ブラスタァァァァァッ!!!」
ブラスター砲から強力なエネルギーが発射され、ボルディーズにヒットした!
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」
ボルディーズはその攻撃により、街の外へと吹き飛ばされる。
「どうだ!?」
ヴィザーは一瞬表情を明るくした。だが、それが次の瞬間には一変していた。
「うわあっ!?」
なんと、遠くにいるボルディーズが触手を伸ばしてヴィザーに攻撃してきたのだ。
さらにヴィザーは触手につかまってしまい、身動きが取れなくなる。
「ぐぁっ……!」
「さすがに少しは堪えたけどな……こんな攻撃じゃ、俺は倒せない!」
「ぐわあぁぁぁぁっ!!」
ボルディーズの言葉と同時に触手から電撃が流れ、ヴィザーは激しい苦痛に襲われる。
「ハッハッハッハッハ!! どうした、これでおしまいか!?」
ヴィザーの耳にブレイグのあざ笑いが聞こえてきた。
「ま……まだ……終わりじゃ……ないっ!!」
「ぐおっ!?」
それを聞いたヴィザーは頭に怒りがこみ上げてきて、全力を振り絞って触手を引きちぎり、脱出する。
「長官! ヴィザリオンになれば……」
そして、峯島にある提案を出した。
『……確かに、ヴィザリオンならば勝利の可能性はあるだろう』
『んなこと言ってねぇで、さっさと合体させろ! でないと、また被害が広がるぞ!』
峯島の言葉と共に、富士の怒声も聞こえてくる。
『よし、ヴィザー! ヴィクトリーフォームせよ!』
「了解!」
峯島からの許可が下りるとヴィザーは構えを取り、

「ヴィクトリィィィィィッ、フォオォォォォォムッ!!」
と思い切り叫んだ。

VES本部。
「ヴィクトリーフォーム・コール発動!」
「ヴィクトリーマシン、スタンバイ!」
ここで、三機のマシン―ヴィクトリーマシン―の発進準備が行なわれていた。
「グランドヴィクトリー! スカイヴィクトリー! アクアヴィクトリー! ベストコンディション!」
順にトレーラー型マシン、戦闘機型マシン、潜水艦型マシンがそれぞれの発進口にセットされ、
「発進!」
日高の言葉と共に地、空、海を駆けていった。

数分たつかたたないかのうちにヴィクトリーマシンはヴィザーの元へたどり着いた。
すると、ヴィザーとヴィクトリーマシンの間にある変化が起きはじめる。
ヴィクトリーマシンがヴィザーを囲むように周りを回り始めると、四機の間に特殊な磁場が発生する。
これによって、ヴィザーは外部からの合体阻止を封じているのだ。

ヴィクトリーマシンが変形を始める。
グランドヴィクトリーの機体が縦に持ち上がり、機体前部が折れ曲がった。
グランドヴィクトリーの左右にあるパネルが開き、上に回転して翼を形成する。
機体後部が下に伸び、つま先が立って足を形成する。
次に、スカイヴィクトリー及びアクアヴィクトリーが変形する。
スカイヴィクトリーの機体後部が持ち上がり、その部分は肩を形成する。
機首が折りたたまれると、下腕を形成した。
アクアヴィクトリーの機体後部が分離し、尾翼が折りたたまれて同じように持ち上がり、その部分が肩を形成した。
そして、機体後部が前へと回転し、機首が折りたたまれ同じように下腕を形成する。
ヴィクトリーマシン三機はヴィザーの前で集結する。
グランドヴィクトリーは胸部から脚部及び翼、スカイヴィクトリーは右腕、アクアヴィクトリーは左腕となって。
そして、グランドヴィクトリーは胸部となる部分が欠損していた。
「はあっ!」
その時、ヴィザーが飛び上がり、ブロック状の形態となってグランドヴィクトリーに結合する。
それと同時にスカイヴィクトリーとアクアヴィクトリーはグランドヴィクトリーと結合し、拳を出現させた。
最後に、アクアヴィクトリーの後部を形成していたパーツは兜となり、ヴィザーの頭と結合する。
そして、フェイスマスクがヴィザーの顔をおおうと、ヴィザーの目に再び光がともり、
「ヴィッ!! ザリッ!! オォォォォォンン!!!」
ヴィザーはヴィザリオンと名乗り、大きく構えを取った。
ヴィザリオン―ヴィザーがヴィクトリーマシンとヴィクトリーフォーム、つまり合体することによってこの姿になる事が出来る。
そして、ヴィザリオンとなればその力はヴィザーの何倍にもなり、そのVの字を描いたような大きな翼が最大の特徴である。
今ここに、再び勝利勇者が来臨したのだ。

「さあ、行くぞ!」
ヴィザリオンは改めてボルディーズに向かって構えを取る。
「本領発揮ってことか……」
『いいか、ヴィザリオン! ヤツの攻撃パターンは格闘に触手の攻撃を加えたものだ! 触手に気をつけて接近戦に持ち込め! 接近戦ならヴィザリオンの方が有利だ!』
「了解、指揮!」
「いくぜ! おらあっ!!」
ボルディーズは不敵な笑みを浮かべたあと、再び触手を伸ばしてヴィザリオンをとらえようとした。
「ウイング、スラァァッシュ!!」
「何っ!?」
しかし、ヴィザリオンの右腕にある翼によって形成されたエネルギーの刃により、触手は全て斬られてしまう。
「俺に同じ技は効かない!」
ヴィザリオンはそういうとすぐにブースターを使って地上を滑空し、
「はあぁっ!!」
「ぐわあっ!?」
ボルディーズをその刃で斬り裂いた。
「ぐっ……!」
ボルディーズは後ろによろけてしまう。
「でやあっ!!」
「がはぁっ!!」
連続してヴィザリオンが攻撃し、ボルディーズは倒れてしまった。
「どうした、ボルディーズ! お前の力はこんなものではないはずだ!」
ボルディーズに乗っているブレイグがボルディーズに檄を飛ばす。
それを聞いてボルディーズは我に返り、ヴィザリオンから距離をとった。
「んなの、俺が一番分かっている! くらえぇっ!!」
そして、ボルディーズが思い切り腕を前に突き出すと、腕から電撃がヴィザリオンに向かって放射された。
「そんな攻撃、俺の拳で撃ち砕いてやる!」
ヴィザリオンはエネルギーの刃をかき消し、腕の翼を折りたたむ。
「エナジィィィィッ、インパクトォッ!!」
そして、左の拳を自分に向かってくる電撃に向かって突き出した。
すると、ヴィザリオンの左腕をエネルギーが包み、拳にぶつかってきた電撃を次々と拡散させる。
「なにぃっ!?」
「はぁぁぁっ!!」
「ぐわあっ!!」
さらにヴィザリオンは先ほどと同様ボルディーズに近づき、今度はエネルギーを纏った拳を入れて吹き飛ばした。
「ハッ!」
ヴィザリオンは拳を戻し、最初の時と同様構えを取る。
「ぐっ……!」
「よし、行くぞ! スタァァ、リィィィジョンッ!!」
ヴィザリオンは何かを決意すると、腕を空に突き出し、スターリージョンと叫んだ。

VES本部。
「ヴィクトリーウェポンNo.1・リージョンスター、スタンバイ!」
日高の言葉と共に、ヴィクトリーウェポンである星型のマシン―リージョンスター―が発進準備される。
「射出!」
そして、リージョンスターは発進口を通り、射出された。

リージョンスターはヴィザリオンの近くまでやってくると、機体を十に分ける。
そのうち、内側を形成していた五つのパーツはヴィザリオンの左腕と結合し、フィニッシュスターとなる。
残りの五つのパーツ―ホールドスター―がフィニッシュスターと結合し、ヴィザリオンはそれが終わったのを確認するとボルディーズに向かって再び構えた。
「ホォォォォォルドッ、リィィィィィジョンッ!!」
ヴィザリオンが左腕を思い切り突き出すと、ホールドスターが左腕から分離し、ボルディーズを捕らえる。
そして、ホールドスターは鋭角部分から特殊エネルギーを発生させ、ボルディーズの自由を封じた。
「くっ!」
ボルディーズに乗っていたブレイグはホールドリージョンで自由を封じられる前に、かろうじて飛び上がってホールドリージョンから逃れる。
「ぐあっ!」
「はぁっ!」
ヴィザリオンが左腕を少し引くと、ホールドスターとフィニッシュスターの間に糸のようなレーザーが張られた。
「ヴィクトリィィィィィッ!!」
そして、ヴィザリオンはその糸に引っ張られるようにボルディーズに向かって地表を滑空しながら突進し、
「フィニィィィィィッシュゥッ!!!」
左の拳をボルディーズに向かって思い切り突き入れた!!
「!!?」
ボルディーズは声も上げずに苦痛を受け、
「ぐ……ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
そして蓄積されたダメージに耐え切れず爆発、四散した。
「く……よくも我が神獣を……! 覚えていろ!!」
ブレイグは捨て台詞をはくと、その場から消え去ってしまう。
「俺の……勝利だ!」

―6月21日月曜日午後0時21分―

流沢スクール第1教室。そこでは、ほとんどの子供が食事をしていた。粋達四人を除いて。
「遅いね……」
「そうね。ニュースだともう終わったはずなのに……」
ため息混じりにそういうと、菜摘は目の前に置かれているまだ手をつけていない自分の弁当箱をチラッと見る。
他の三人の弁当箱も、全く手をつけられていない。
四人とも勝の帰りを待っているのだ。戦闘の勝利を祝うためにも。
ガラッ!
その時、第1教室の後ろのドアが開いた。
四人が振り向くと、そこには勝が笑顔で立っていた。
「勝くん!」
真っ先に勝に駆けつけたのは粋だった。誰よりも勝のことを心配していたのは、粋なのだ。
「遅かったね」
「久しぶりに戦ったからな、機体の調子が少しおかしくなったんだ」
勝は、灯矢の言葉に対して言い訳とも取れる言葉を返した。
「言い訳にならないわよ」
「さっ、早くお弁当にしようよ」
四人は勝を教室の中に入れ、勝と共に昼食を楽しんだ…

―6月21日月曜日とある時刻―

聖なる宮殿ゴッドパレス。
「失敗して戻ってくるとは……一体どういうことだ?」
ゼイヴァが表情を変えずにブレイグをにらみつける。見た目ではそうでもないが、実は内心かなり怒っている。
「そんなに怒ることではないだろうが。次こそは必ずヴィザリオンを倒す!」
ブレイグは拳に思い切り力を入れた。
「次こそ必ずしとめるのだぞ。我々が一刻も早くやり遂げなければ地球は……」
ゼイヴァの最後の言葉を聞くか聞かないかのうちに、ブレイグはどこかへと去ってしまった。
「……………………………」
そして、その光景を興味がなさそうにアルディアが見ていた。

To be continued…


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私は、悲しくなります。あなたが死んだら…

自殺を図る少女。だが、少女の願いは届かず、一命をとりとめる。
再び試みるも、今度は神威という名のロボットに阻止される。
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その時、少女に襲い掛かる無差別攻撃。
少女を守る神威。そして、神威は少女のために戦闘に挑む!

勝利勇者ヴィザリオン 第2話「神威」

守るべきは輝く心、それを忘れないでください……!

初回公開日:2002年4月1日

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