第9話「燃え上がる烈火」


 『邪騎士レクイスト』の進撃により出動した勇者達。だが、レクイストの圧倒的な強さに次々とピンチに立たされる。
 しかもそれを止めようとした空人は、レクイストの演奏する『ヘルズゲート・フルート』を受けてしまった。
 ヘルズゲート・フルートの力により恐怖に怯えきってしまい、ファイナルの合体を解除するほどに『勇気』を無くしてしまう。
 そんな勇者達をあざ笑うかのように、レクイストはその場から去っていった。

 新たな敵の脅威は去ったものの、勇者達に残ったダメージは想像を絶する大きさとなってしまった……

 HBCフォースオーダールーム。ここに瀕死のダメージを負っているファイナル達が収納されていた。
「これはひどい……」
 傷ついたファイナル達を見て石橋は思わず顔をしかめる。
 ファイナル達の傷を見るだけで、まるで前回の戦闘が目に映りそうなぐらい、その傷はあまりにも生々しかったのだ。
「あいつは……レクイストは、とんでもない力を持っていた。俺達を、こんなにまでするぐらいの力を……」
 レクイストとの戦闘を思い返して、瞬治は再び怒りがこみあげてきた。
「その事はあまり思い出さない方がいい。とりあえず、ファイナル君達を修理するのが先決だ」
「サンダージェットや、セイバードラゴン達は?」
 瞬治は石橋をじっと見つめながら質問する。
「……サポートメカ達も何とか直せるのだが、今すぐにとはいえない。時間がかかりすぎるな……」
「そうか……とりあえず、ヴァリアント達は何とかしてくれ」
「そうだな。我々も全力で修理に取り掛かる。それまでは待機しててくれ」
「ああ……」
 瞬治は気の抜けたような返事をし、そのままフォースオーダールームを出ていった。
「……くそおっ!」
 怒りをこらえきれずに壁を殴る瞬治。だが、帰ってきたのは痛みと反響した音だけだった。
「俺は……誓ったはずなのに……畜生……ちくしょおぉぉぉぉぉっ!!」
 瞬治は大声で思い切り叫んだ。そんな事をして怒りが解消されるわけでもないのをわかっていながら……

 一方、開発室ではスタッフ達がせわしなく動いていた。その中央には巨大なトレーラーらしきメカがあった。
「急ぐんだ! 勇者達が危機に陥っている今、『B-プロジェクト』を完成させなければ我々の未来も無いんだ!」
 スタッフに向かって神波は怒鳴り散らしていた。その形相は今までの神波とは違い、かなり険しい表情をしていた。
「これを、一刻も早く完成させなければ……」
 神波はまだ制作途中のメカをじっと見つめてそうつぶやいた。

 数日後。南立葉小学校5年2組の教室。そこに空人の姿はなかった。
「ねえ、晴香」
「何?」
「空人はどうしたの? ついこの前怪我が治ったばかりなのに……」
「あ、空人は……風邪、そう、風邪ひいちゃったの」
 晴香は恭子の質問に対して慌ててごまかした。
 まさか「勇者と共に戦っていて、その時に敵から激しい『恐怖』を受けてしまった」なんて言えるわけがないからである。
「珍しいな、空人が風邪ひくなんてよ」
「そ、そうだね……」
 晴香は必死に作り笑いをする。だが、いつものような調子で笑うことはできなかった。

 明日ヶ丘市上空。そこでゴルヴォルフとレクイストが互いを睨むようにして空に浮かんでいた。
「てめえ、勝手なことすんな! 今は俺が任務を受けているんだ!」
「お前が戦いやすくなるようにしてやったのだ。感謝するんだな」
 レクイストはゴルヴォルフをあざけるように軽く微笑する。
「それより、お前も急がなければソルダーズのようになるぞ」
「くっ……」
「まあ、そうなったとしても私がお前の『魂』を有効に使ってやる」
「誰がおまえに屈するか!」
 ゴルヴォルフは怒りを押さえ切れずにレクイストを殴ろうとした。だが、その拳は空を切り、今度は逆にゴルヴォルフの首に鎌の刃がかけられていた。
「!」
「お前ごときが私にかなうとでも思っていたか? 私もなめられたものだな……」
 レクイストはまるで瀕死の蟻を見下すかのようにゴルヴォルフをののしる。
「今回は私やヘルゲイズ様がお前に与えた『チャンス』なのだ。有効に使うんだな……」
 レクイストはそう言い残すと鎌を戻してどこかへと去っていった。
「………………」
 その場に残ったゴルヴォルフは冷や汗を流しつつもレクイストをずっと睨み続けていた。

 ある日曜日の午後。HBCフォースオーダールームでは気を紛らわすかのように誠也があちこちと物に当たっていた。
「くそ! ふざけんなってんだ、あのキザ野郎!」
 レクイストの事を思い出す度に、誠也は怒りが込み上げ、何度も物に当たる。
「いちいちうるさいぞ、誠也」
 瞬治は誠也に向かってあきれているような目で訴える。その表情は、まだどこかに怒りが残っているようだった。
「しょうがねーだろ。あいつ、すっげームカつくんだからよ」
「まあ、気持ちはわからなくもないけどな……」
「あ~、あいつのこと思い出す度に、こう、怒りが……この野郎!」
 再び物に当たる誠也。だが、急に足を抑えてうずくまってしまった。
「……どうしたんだ?」
「足を突き指した……」
「馬鹿……」
 瞬治が呆れ返ったその時、
ビーッ! ビーッ!
「!!」
 HBCにいつものように非常警報が鳴り響いた。
『瞬治君、誠也君、地球外知生体があらわれた! すぐに出動してくれ!』
 その直後に石橋の声がスピーカーから聞こえてくる。
「わかった! いくぞ、グランドレオン!」
「いつでもいいぜ!」
 石橋の声に反応して誠也とグランドレオンはいち早く出動していった。
 だが、瞬治はその場に残って、スピーカーの石橋に向かって質問をする。
「……石橋司令官。空人は?」
『……一応聞いてみるが、おそらくまだ無理だろう。ヴァリアントとグランドレオン君でなんとかしのいでくれ』
「わかった」
 瞬治は軽くため息をつき、ゆっくりとヴァリアントに乗り込んだ。
「VALIANT、Let’s go!」(ヴァリアント、行くぞ!)
「了解!」

 晴香の自宅にある空人の部屋。空人は自分のベッドで布団をかぶったまま動かなかった。
「………………」
 あの時の恐怖がまだ拭いきれていないのだ。
 空人の目は涙によって赤く充血しており、顔もいつもの空人らしい笑顔は消え、今にも泣き出しそうな表情だった。
「空人……」
 その時、ドアからノックの音と晴香の声が聞こえてくる。
「………………」
 しかし、空人は返事をしない。
(空人の……バカ……)
 晴香は空人の部屋の前から遠ざかり、階段を降りながらそう思っていた。

プルルルルルルル……

 と、その時、電話の音が鳴り響いた。晴香は慌ててその受話器を取り、ゆっくりと口を開いた。
「もしもし……」
『晴香君か?』
 受話器の奥から聞こえてきたのは、石橋の声だった。
「……石橋さん?」
『ああ、そうだ。空人君があんな状態でこんなことを告げるのは悪いとは思うのだが、つい先程地球外知生体が現れた』
「ええ!?」
 晴香は驚いた。そう言われると、遠くで爆音らしき音が聞こえてくる感じがする。
『今、瞬治君と誠也君が向かっている。空人君にも伝えておいてくれないか?』
「………………」
 石橋の言葉に、晴香は答えることができなかった。
『まだ出撃できないようなら無理に出させなくていい。我々が強制させる権利はないからな』
「……はい」
 晴香は小さくうなずき、これで会話は終わりかと思った。
『……今の空人君は、『勇者』の心をなくしているな……』
「え……どういう事ですか?」
 その時、突然石橋が頭に浮かんだことを口にしたので、晴香は急に我に帰ったように石橋に聞き返す。
『晴香君もわかると思うが、勇者とは『勇気ある者』と書く。それはわかるね?』
「はい……」
『今の空人君は、レクイストとかいう者が与えた『恐怖』に怯えきっている。恐怖に心を支配されていたら『勇気』はなくなっているとしか言えない』
「………………」
 晴香は石橋の話に黙って耳を傾けていた。
『勇気をなくしてしまったら、それは『勇者』と呼ぶ事ができない』
「それじゃ、今の空人だったら……」
 晴香の頭の中に、一瞬嫌な想像がよぎる。
『うむ。ファイナル君の合体どころか、恐怖のせいで戦うことができないだろう』
「そんな……」
 石橋の言葉は、晴香にとって残酷に聞こえた。

 明日ヶ丘市のとある街中。そこでヴァリアントとグランドレオンは合体なしで魔物と必死に戦っていた。
「トライアングルフィールド!!!」
 そして、今まさにその戦いは終盤を迎えようとしていた。
「今だ、ヴァリアント!」
「ヴァリアントサンダー!!!」
 ヴァリアントが腕を振り上げ、魔物に向かって手を突き出すとものすごい勢いでヴァリアントの手から雷が魔物に向かって飛んでいく!
「グアァァァァァァァァ!!!」

ドオォォォォォォォォン!!

 魔物がその攻撃を受けた瞬間、激しい大爆発を起こした。
「I wish you go to the heaven」(お前が天国に行くことを願っておいてやる)
 そして瞬治はいつもどおりに消滅した魔物に向かって決めゼリフを言う。
「今回の魔物はいつもより弱かったな。さすがに向こうも品切れになったのか?」
 誠也は魔物に手応えを感じることが出来ず、少し冗談を口にした。
「いや、もしかしたら以前のときみたいにまた魔物が現れるかも……」
 瞬治がそう言いかけたその時、瞬治の嫌な予感は的中した。

ズウゥゥゥゥゥゥン!!

「うわっ!?」
 二匹目の魔物が激しい轟音と共に空から現れたのだ。
「くそ、また現れやがって! いい加減本気で怒るぞ!」
 誠也は現れた魔物に対して激しく怒る。
「く……サンダージェットはまだ直っていないから合体は不可能。ヴァリアントのままでもつか、賭けに出るしかないな……」
 瞬治は現在の状況に思わず表情を変える。
「VALIANT、Let’s go!」(ヴァリアント、行くぞ!)
「了解!」
 ヴァリアントは力強く返事をし、魔物に向かって突進していった。
「グランドレオン!」
「やってやるぜ!」
 同じようにグランドレオンもレオンクローを展開させながら魔物に向かっていった。

 同じ頃、HBCグレートオーダールーム。
「地球外知生体がもう一体……くそ、このままだとさっきの戦いで体力を消耗している二人の方が先に倒れてしまう!」
「司令官! どうするんですか!?」
 スタッフが石橋にむかって問い掛ける。
「………………」
 石橋は少し考えた後、思いがけもしない言葉を口にした。
「……今から空人君のところへとむかう!」
「ええ!?」
 その言葉に、スタッフの全員が驚きを隠せないでいた。
「でも、空人君は今……」
「私の勘なら、私が着く頃にはきっと空人君は元の空人君に戻ってるはずだ!」
(また根拠のないことを……)
 荒井は根拠のない石橋の勘にあきれを感じる。
「荒井君!」
 その時、石橋は急に荒井の方を振り返って呼びかけた。
「は、はい!」
「神波君に伝えてくれ! 私が返ってくるまでに『アレ』の整備を完璧にしておけと!」
「わ、わかりました!」
 荒井に伝言を残し、石橋は急いでグレートオーダールームを出ていった。
(空人君……君なら絶対に……)
 石橋は早足で歩きながらそう思っていたが、その後は出てこなかった。

 再び晴香の家。いまだに空人は部屋でふさぎ込んだままだった。
「空人……入るよ?」
 その時、晴香が空人の部屋に入ってきた。
「………………」
 しかし、晴香が話しかけてきても空人はさっきと同様に返事をしない。
「空人……今、瞬治さんと誠也さんが戦ってるんだって……石橋さんから電話あった……」
「………………」
 晴香の言葉に一瞬反応するが、それでも動こうとしない。
「……行かなくていいの? 空人も『勇者』なんでしょ?」
「怖いんだ……」
 すると、空人はやっと口を開いた。だが、口にした言葉はいつもの空人らしくないものだった。
「だって、あんなのを見たら……誰だって怖くなるよ!」
 空人はベッドから起き上がり、晴香に向かって激しく言いつける。
「空人……」
「こんな怖い思いしたの初めてだった……次にまたあのレクイストと戦うと気になったらと思うと、本当に怖いんだよ!」
 何度も何度も「怖い」という言葉を口にして、空人は晴香に怒鳴りつける。
「……あんな、あんな怖いものを見るぐらいなら、戦わない方がいいよ!」
「……空人のバカ!!」
「!!」
 空人の言うことを黙って聞いていた晴香が、突然怒り出した。晴香のその表情は、今までに見たことないような表情だった。
「石橋さん、言ってたよ……今の空人は『勇者』じゃないって……」
「勇者じゃない……?」
 空人は少し驚いたような表情で晴香をじっと見つめる。
「石橋さんも……空人も前に言ってたでしょ。勇者は『勇気ある者』って書くんだって………空人は勇気があったから勇者になれたんでしょ?」
「………………」
「今の空人、怖がってて、全然『勇気』がないよ! 勇者じゃないよ!」
 晴香は今にも泣き出しそうな表情で空人に向かって何度も怒鳴りつける。
「……そんな空人、私、嫌い!」
 晴香は言いたいことを全部言った後、つらさのあまり泣き出してしまった。
「晴香……?」
 そんな晴香の姿を見て空人は心が痛んだ気がした。
(晴香を泣かせた……父さんや母さんに言われたのに……誰も、泣かしちゃいけないって言われたのに……僕は……)
 自分がくじけていたせいで晴香を泣かせてしまった、という気持ちで恐怖に怯えていた自分が嫌になってきている気もした。
(もうこれ以上誰も泣かせたくない……だから……)
「ごめん、晴香……」
 空人は立ち上がり、晴香に向かって謝った。
「………………」
「僕が恐怖に怯えてて、戦いを怖がって……これだけのことでみんなを困らせて……晴香を泣かせて……本当にごめん……」
 空人はそういって晴香に向かって再び、今度は頭を下げて謝った。今までの自分の行為を反省する気持ちをこめて。
「空人………ううん、謝んなくていいよ……」
「そうだよね。怖がっていちゃ、勇者じゃないよね。僕は勇者になりたがっていたのに、これじゃ皆に笑われちゃうよ」
 空人の表情が、すこしづつ明るくなっていく。
「晴香。僕、もう一度『勇気』をもって戦うよ! だってこれ以上ファイナルやみんなに迷惑をかけたくないから! 晴香を泣かせたくないから!」
 空人はそういってもう一度晴香を見つめた。その瞳は、いつもの空人みたいに輝きを取り戻していた。
「……うん。がんばってね、空人!」
 晴香は精一杯の笑顔で、空人を励ましの意味もこめて応援する。いつの間にか、晴香の涙は止まっていた。
「うん!」
 空人が自信を持った顔でうなずいたその時、玄関からチャイムの音が聞こえてきた。
「あれ、誰だろ……?」
 晴香は、少し疑問を感じながらも玄関へと向かっていく。

「はーい。あ……」
「こんばんは、晴香君」
 晴香がドアを開けたそこには、石橋がいた。
「石橋さん、どうしたんですか?」
「実は、二体目の地球外知生体が現れたのだ」
「ええ!?」
「それ本当ですか!?」
 空人が晴香の後ろで驚いた表情で石橋に向かって聞き返す。
「空人君! もう大丈夫なのか?」
「あ、はい、もう大丈夫です! 今まで迷惑かけてごめんなさい!」
 石橋の問いに答え、そして晴香のときと同じように頭を下げて謝った。
「いや、空人君のせいじゃない」
「それより、瞬治さんと誠也さんは大丈夫なんですか!?」
「おお、そうだったな。とりあえず乗りたまえ」
 そういって石橋は車(ファイナル)の方を親指で指差す。

「……まず、空人君に言わなければならないことがある」
 石橋は運転しながら空人に向かって話しかける。
「何ですか?」
「それはファイナル君から聞くといいだろう」
 そういって石橋は軽く機体(ファイナル)を叩いた。
「ファイナル……?」
『空人……実は、ファイナルセイバスターに合体することができないのだ』
「ええ!?」
 ファイナルが発した言葉に空人と晴香は驚きを隠せなかった。
『あの時、空人の恐怖によって私は合体を解かれた。その時に、セイバードラゴンは空人の恐怖を感じ取ってしまい、合体に関してプロテクトをかけてしまったのだ』
「僕のせいで……ごめん、ファイナル」
 空人は自分がやってしまった事を悔やみ、唇を噛み締める。
『空人が謝る必要はない。それで、セイバードラゴンはもう大丈夫なのだが、再び合体するにはあの時の『恐怖』以上の『勇気』が必要なのだ』
「『恐怖』以上の『勇気』……」
 空人はファイナルの発した言葉を繰り返した。
 「恐怖以上の勇気が必要。」その言葉は空人にとって抽象的であったため、自分が再び勇気を発揮できるのか思わず不安になってしまっているのだ。
「その勇気を今すぐ発揮させるのはおそらく無理であろう。たとえ勇者でも恐怖を乗り越えた後ではな」
 空人とファイナルの会話に石橋も入ってきて、空人に向かってそういった。
「それじゃ、ファイナルさんの合体は無理なんですか?」
「いや、一つだけ方法がある」
 晴香の問いかけに石橋が希望を持たせる一言を発した。
「え?」
 その言葉に、全員が声を合わせて軽く驚く。
「セイバードラゴンとの合体が無理なら、他のサポートメカと合体すればいいのだ」
『他のサポートメカ?』
「そんなのあるんですか?」
「ああ」
 石橋は自信を持ってうなずいた。

 HBCフォースオーダールーム。そこに空人達を乗せたファイナルが到着する。
「石橋司令官、いつでも出撃可能です」
「そうか。それでは空人君、君にこれを見せよう!」
 そういって石橋は空人達に向かって巨大なトレーラーを背に仁王立ちした。
「これが我々HBCの開発したファイナル君の新たなるサポートメカ、その名も『バーニングダッシャー』だ!!」
「バーニング……ダッシャー……」
 空人は石橋がバーニングダッシャーと呼んだトレーラーを眺めて、石橋が叫んだその名をつぶやいた。
 バーニングダッシャーは、その名の通り真っ赤に燃える炎のような鮮やかな赤色をしており、名前負けしないほど巨大でかつ強力そうなボディをしていた。
「それで、合体の時のキーワードなんだけど……」
「あ、え~と……」
 そこに急に話しかけてきた神波を見て、空人は少し戸惑ってしまう。
「……あ、そうか。君とは初めてだったね。僕は『神波憲和(かんなみのりかず)』。一応、HBCのメカニックをやってるよ。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
 空人は神波に向かって元気よく挨拶をした。
「合体のキーワードは、空人君が勇気を出すための言葉『ファイナル・ブレイブ』をちょっと意識して『バーニング・ブレイブ』にしてみたから」
「バーニング・ブレイブ……」
 自分の中に深く刻み込むように空人は神波の言った言葉を繰り返した。
「そう。その言葉でファイナル君は烈火の勇者『バーニングセイバスター』になることができるんだ」
「バーニングセイバスター、か……ありがとう、感謝する」
「いやいや」
 ファイナルは神波に向かって礼を言ったので、神波は少し照れる。
「さあ、このバーニングダッシャーと共に瞬治君達のもとへと向かうのだ! 皆、君のことを待っているぞ!」
「はい! 行くよ、ファイナル!」
「ああ!」
 ファイナルと空人は、地球の平和を取り戻すために再び出撃していった。
(がんばって……空人……)
 その後ろ姿を晴香はじっと見つめながら手を組んで祈った。

 明日ヶ丘市の街中。さっきまでとは違い、ヴァリアントとグランドレオンはピンチに立たされていた。
「ぐはっ!」
「ぐあっ!」
 魔物の一撃により二人の勇者はダメージを受け、そのまま倒れてしまう。
 二人の体には、その一撃だけではつくはずの無い傷もあった。おそらく、何回も魔物の攻撃を受けていたのだろう。
「く……まずいな……」
「このままだと、マジで……」
 瞬治と誠也もかなり焦ってきた。二人の言うとおり、このままだと負ける可能性も出てきているのだ。
「グオォォォォォォ!!」
 その時、魔物はヴァリアントに今まさに止めを刺そうとしていた。
「サンダーシールド、オン!」
 魔物の攻撃を何とか防御するヴァリアント。
「なっ!?」
 だが、かなりエネルギーを消耗していたため、サンダーシールドはすぐに失われてしまった。
「ぐああっ!!」
「瞬治! ヴァリアント!」
 魔物の一撃によりヴァリアントは吹き飛ばされ、数メートル吹き飛んで倒れてしまった。
「この野郎! レオンクロー!!」
 怒りに燃えたグランドレオンは、手の甲に装着された爪で魔物に向かって攻撃する。
「ガアアッ!」
「何っ!?」
 しかし、魔物はグランドレオンに向かって火炎弾を放ち、グランドレオンの攻撃を阻んだ。
「ぐあっ!」
「グランドレオン!」
 誠也は急いでグランドレオンに駆け寄る。グランドレオンの体もかなり傷つき、戦うのは無理に近づいてきていた。
「まずい……体力をかなり消耗しちまったみたいだ……」
「なに弱気になってんだよ! 勇者だったら絶対に負けない! そうだろ!?」
 弱気になりかけているグランドレオンを誠也は誠也なりに励ます。
 その間にも、魔物は体内に力をため、ヴァリアントとグランドレオンに向かって最後の一撃を放とうとしていた。
「誠也! お前だけでも逃げるんだ!」
「そんな事できるか! 俺はまだ負けるなんて認めてないぞ! こんな所で負けてたまるかってんだよぉ!!」

ズドオォォォン!

 誠也が思い切り叫んだ瞬間、魔物はとどめの一撃を放った!
「!!」
「ファイナルバーン!!!」

ズバアァン!!

 それは、まさに一瞬の出来事であった。
「……?」
 瞬治たちはゆっくりと目を開け、今起こった状況を確認する。
 目の前に見えたのは自分の攻撃がかき消されて驚いている魔物、そして右側にはファイナルバーンを放った後のファイナルと、それを見守る空人の姿があった。
「ファイナル!!」
「空人!!」
 全員が歓喜の表情になり、ファイナルと空人の方へと駆け寄る。
「空人! お前、もう大丈夫なのか!?」
「うん、もう大丈夫だから! みんな、今まで迷惑かけてごめんなさい!」
「謝らなくていい。空人が無事ならそれだけで充分だ」
「そうそう。お前を迷惑だなんて思ったこと、一度もないぜ!」
 空人に向かって瞬治と誠也はサムズアップをする。
「ありがとう! 瞬治さん、誠也さん!」
 そんな二人を見て空人は笑顔で礼を言った。
「さあ、空人もファイナルも復帰したことだし、改めて戦うぞ!」
「よーし、ファイナル、合体だ!」
「ああ!」
 空人の言葉にファイナルはうなずき、いつものように構えを取った。そして、
「バーニング・ブレイブ!!」
 空人は大きな声で新たな合体のためのキーワードを唱える。
「バーニングダッシャー!!」
 ファイナルが思い切り叫ぶと、地平線の彼方からバーニングダッシャーが現れた。
 ファイナルの新たなるサポートメカ『バーニングダッシャー』とファイナルの合体が始まる!

 バーニングダッシャーの最後尾にあるパーツが上を向き、足の爪先を形成する。
 機体がゆっくりと立ち上がり、完全に直立すると機体の上半分が横に半回転した。
 機体の上部の後ろにあるパーツが立ち上がり、機体上部が二つに割れ、腕を形成する。
 機体の左右についている巨大なバスター砲が機体から分離し、後ろに上がっている腕が下りた。
 その機体の後ろには、セイバードラゴンの時と同じように空洞があった。
「たあっ!」
 ファイナルはバーニングダッシャーに向かって飛び上がり、背中と結合した。そしてそれと同時に空人は浮き上がり、胸の飾りから機体の中へと吸い込まれていく。
 一通りの動作が完了すると両腕から炎を上げながら手が現れ、握り拳をつくると機体から顔が現れた。
 最後に巨大なバスター砲が背中と結合し、砲口が前を向いた。
「烈火合体!!」
 ファイナルが叫ぶと同時に両手を振り上げ、
「バーニングセイバスター!!!」
 最後の掛け声でバーニングセイバスターはファイティングポーズを取った。

 ファイナルセイバスターの時とはまた違った強靭そうなボディ、そして何よりも特徴的なのが背中から見える巨大なバスター砲。
 まさにその姿は燃え上がる烈火のような強大さを感じさせる。
「………………」
 バーニングセイバスターの姿に、瞬治たちは開いた口が塞がらなくなってしまった。
 なぜなら、今までどおりにファイナルセイバスターに合体すると思っていたからである。
「バーニング……」
「セイバスター……?」

 一方、HBCグレートオーダールームは瞬治たちとは別の事で騒然としていた。
「空人君がバーニングセイバスターに融合しただと……?」
「あんな機構、バーニングダッシャーにつけていましたっけ?」
 HBCスタッフはバーニングダッシャーを開発した神波に質問する。
「い、いや、あんな事は僕の技術じゃできないです……」
 神波の口から返ってきた言葉は、まるで独り言のようだった。
「石橋司令官……」
「……ゆ、勇者だったら『奇跡』を起こすものだ!!」
 石橋は慌ててポーズを取って豪語する。
「はぁ……」
 しかし、グレートオーダールームにいたスタッフ全員はあきれてほぼ同じタイミングでため息をついていた。

「すごい、すごいや! 僕もファイナルと一緒に戦えるんだね!」
 一方、バーニングセイバスターの中で空人は喜んでいた。
「これなら、私は今までよりも強力に戦うことができる」
 そう言いながらバーニングセイバスターは魔物の方を向く。
「よーし、頑張ろう、ファイナル!」
「ああ!」
 空人の掛け声と共にバーニングセイバスターは魔物に向かって構え、攻撃を開始した。
「ファイヤーバスター!!」
 バーニングセイバスターはキャノン砲を魔物に向け、炎の弾を打ち出した。
「ガアッ!」
 その攻撃を真正面から受けてしまった魔物は体勢を崩し、よろけてしまう。
「アームバルカン!!」
 間髪入れずに、バーニングセイバスターは腕のバルカン砲から銃弾を撃ちだし、魔物に攻撃を与える暇を与えなかった。
「グアアァァァァァ……」
 魔物は激しく振りかかってくる攻撃のために何とか防御しようとするが、激しい攻撃の嵐によって実現させることができずにいる。
「すごい、すごいや!」
「なんだ、この強さ……」
 瞬治はファイナルセイバスター初戦闘の時のように、その強さに驚いていた。
「す、すげえ………って感心してる場合じゃない! グランドレオン! お前も攻撃に参加しろ!」
「え? あ、ああ!」
 グランドレオンは誠也に言われて我に帰り、かなり傷ついている体をおこして魔物に向かっていった。
「レオンクロー!!」
 グランドレオンは魔物に向かってレオンクローで攻撃する。
「ウガアァッ!」
「うわあっ!」
 だが、魔物は攻撃を受けているにもかかわらずグランドレオンの攻撃を手で払う。
「グランドレオン!」
 吹き飛ばされたグランドレオンをヴァリアントが倒れる間一髪のところで受け止める。
「悪いな、ヴァリアント……」
「ヴァリアント達の傷ついた体じゃ地球外知生体と戦うことは無理だ。悔しいが、ここはファイナル……いや、バーニングセイバスターに任せるしかない」
 そういって瞬治はバーニングセイバスターの方を向く。
 バーニングセイバスターはいまだに魔物に向かってバルカンを打ち続けていた。
「そうだな………って、俺に「攻撃しろ」って言ったのは誠也だぞ!」
「なっ……俺のせいかよ!?」
 誠也は自分のせいにされて、思わずグランドレオンに向かってツッコんだ。
「グアアァァァァァ!!」
 その時、魔物がやけを起こし、相打ちを覚悟してバーニングセイバスターに突進してきた。
「ファイヤーバスター!!」
 バーニングセイバスターは魔物に向かって炎の弾を打ち出す。だが、魔物はその攻撃を受けても全くひるまずにどんどん近づいてきた。
「ファイナル、だんだん近づいてきてるよ? このままじゃ……」
「大丈夫だ。私を信じてくれ」
 空人は心配の言葉をかけるが、バーニングセイバスターは自信を持った返事をした。
「いくぞ!」
 そして魔物に向かって改めて構え、キャノン砲を魔物に向けて照準を合わせた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 バーニングセイバスターは初めてファイナルバーンを放った時のように激しく咆哮し、キャノン砲にエネルギーをためていく。
「ハイパーバーニングバスター!!!」
 バーニングセイバスターが技の名前を叫ぶと同時に、キャノン砲から巨大でしかも激しく燃え盛る火炎の渦が打ち出された!

ズバアァァァァァァン!!

「グアアアッ!!」
 魔物は火炎の渦を正面からまともに受けてしまい、激しいダメージを受けてしまった。
「ハァァ……」
 バーニングセイバスターは後ろを振り向き、そして軽く構えを取る。
「グ………グアァァァァァァ!!」

ドオォォォォォォォォン!!

 その瞬間、魔物は蓄積されたダメージに耐え切れず、後ろに倒れながら大爆発をおこした。
「やったあ!!」
 空人は魔物が消滅したのを確認すると、今までずっと溜まっていた喜びを体全身に放出させた。
「終わった……」
「はあ……これでやっとゆっくり休めるぜ……」
 誠也は安心した瞬間、力が抜けてその場に座り込んでしまった。

「空人」
「なに? ファイナル」
「空人が恐怖から立ち直ったおかげで、私は新たな力を手にすることができた。ありがとう」
 合体を解いたファイナルは、空人に向かって感謝の気持ちを言った。
「うん……」
 空人は一言、それだけ答えた。だが、その顔は今までの中で最高の笑顔だった。
「あ、あれ……?」
ドサッ!
 その時、空人は急にめまいに襲われ、そのまま倒れてしまった。
「空人!?」
 瞬治と誠也が急いで空人に駆け寄る。
「スー……スー……」
 だが、空人は安らかな顔で寝息を立てながら寝ていた。さっきのは『めまい』ではなく、『睡魔』だったのだ。
「なんだ……」
「よほど疲れてたんだろうな。この数日間、いろいろとあったからな」
 瞬治はそう言いながら空人の顔を覗く。空人の顔はとても安らかであり、ついこの間までのあの恐怖に歪んだ顔とは違っていた。
「まったく、俺達も早く寝たいものだな」
 そういって誠也は空人を抱え、ファイナルの方を向いた。
「ファイナル、空人を家まで送りたいから……」
「わかった」
 誠也が最後まで言わなくてもわかったのか、ファイナルは車に変形する。
「おっ、わかってんじゃん。ついでだから俺も頼むぜ」
「ああ」
 誠也は空人と共に自分もファイナルに乗り込み、その場を去っていった。
「……さてと、俺達も帰るぞ。ヴァリアント、グランドレオン」
「了解」
「はいよ」
 瞬治もヴァリアントに乗り込み、グランドレオンと共にその場を去っていく。

 明日ヶ丘市上空。戦闘を最初からずっと眺めていたゴルヴォルフが、歯ぎしりをしながらそれぞれの帰路へとつく勇者達を睨んでいた。
「くそ……どこがチャンスなんだ。あの嘘つきヤロー……」
 ゴルヴォルフは頭に浮かんできたレクイストの言葉に対してまた怒りが込み上げてくる。
「やっぱり、あいつを信じた俺が馬鹿だった。魔物の残りも少ねーし、次から本気でかかるとするか……」
 そしてしばらく独り言をつぶやいたかと思うと、そのままどこかへと飛び立っていった。
「………………」
 すると、闇に溶け込んで全く姿が見えなかったレクイストが姿を現わし、飛び立っていったゴルヴォルフを眺める。
「お前がチャンスを使いこなせなかっただけだ……」
 レクイストは捨て台詞を吐き、再び闇の中へと消えていった。

第10話に続く


次回予告

よっ! 誠也だ。俺達の次の任務を教えるぜ。

バーニングセイバスターという新たな姿を手に入れたファイナル。これならしばらくは安心だ。
まだサポートメカが完全に直っていない今、悪いがバーニングセイバスターにたよるしかないな。
あれ……瞬治、お前今日はなんか用があるのか? ま、俺もちょっとした用があるから関係無いけどよ。
…あ~あ、この日だけはどうも嫌な気分だぜ。俺にとってあまり思い出したくない日なんだからな。
瞬治もなんか不機嫌な顔してるし、今日は嫌な一日になりそうだな。

次回、勇者伝説セイバスター『見れない時間』

いくぜ、セイバスター! お前達の力を見せてやれ!

初回公開日:

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